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片付けもあらかた終わった頃、スマホの通知音が鳴った。
一瞬あいつの顔が頭をよぎったけど、通知音の正体はママからのメッセージだった。
『引越しの準備は順調?』と書かれてあったので、『もう終わったよ』と返信する。
あいつからの連絡が入っていないことに安心しつつも、なんだか寂しい気持ちになる。
窓の外を見ると夕暮れ時になっていた。
「デリバリーで夕食を注文しましょうか」と村崎が言うのを止め、「デパートまで連れて行ってくれる?」とお願いする。
「先ほど並べたキッチン用品は、てっきり飾りだと思っていたのですが、まさかお料理をされるおつもりですか?」
村崎は不必要に整った顔を歪ませながら大袈裟に驚いて見せる。
「あたしだって料理くらいできるわ」と言うと、「ご冗談を」を笑われる。
「普段、料理なんてされたことないでしょう」と馬鹿にしてくる執事を嗜めながら玄関に向かう。
確かに家庭科の授業くらいでしか料理したことないけれど、ネットに転がっているレシピを見た感じ、簡単にできるものもあるようだし、あたしにもできるはず。
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