2人が本棚に入れています
本棚に追加
『ありがとう、お兄ちゃん。お兄ちゃんがはつめいかでよかった』
「……お礼を言うのは僕の方だよ」
『そうなの?』
「うん。……花火、見に行こうか」
今度はしっかり手を繋いでいこう。頷いた弟と共に歩き出す。
『お兄ちゃん』
花火が見えるあの場所へ辿り着く少し前、弟が手を引っ張ってメモ帳を差し出してくる。首を傾げれば、弟の小さな口が『めくって』と言った気がした。
花火の眩い明かりが点滅する夜の中で、僕はそっと手を伸ばす。どこか期待するような顔でこちらを見つめる弟と、溢れる夏の幸せ。
そこにはただ、こう書かれていた。
『お兄ちゃんみたいな発明家になりたい』
煌びやかな鈴の音が、すぐ傍で小さく鳴り響いた。
最初のコメントを投稿しよう!