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――ああ、あれは神さまだ。
一目でそうだとわかった。
大樹でできた日陰で汗をぬぐい、水筒を取り出していた芝田は、そちらから目を逸らした。
神さまのような強い存在は、あまり見ないほうがいい。下手をすれば持っていかれていしまう。
水筒の麦茶を飲もうとし、柴田は失敗した。
取り落としてしまった水筒は足の間で止まり、とぽとぽと中身がこぼれていく。麦茶でできた黒い染みにため息が出る。
拾おうと身をかがめた芝田は、そのまま後ろの木にずるずると背を預けていった。
すわりこみ、少し前までは軽かっためまいが強まっているのを感じる。
倦怠感もひどい。
熱中症かもしれない。強い日差しの下を、長々と歩きすぎてしまった。
途中でもっとこまめに水分を取ればよかったのだが、追い立てられるような歩みのなか、そんな考えはまったく浮かばなかった。いまさらの後悔だ。足元の麦茶の染み
はもう大きくならなかった。芝田はふたたびため息をつく。
うつむいて柴田は目を閉じる。ぐわんぐわんと暗くなった視界がまわっているようだった。
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