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 写っているものは、ひとの手が入った様子のない、のび放題の草に覆われた土地だ。『廃村』と記載された写真は、どこかの建物に入りこんでから撮影したものらしい。  高台にあると思しきそこからの眺めは、ひたすら緑一色である。明るい昼の日差しの下、風が草葉に流れをつくっていた。  そこだけを見れば、むしろ安らげるような美しい風景だ。  芝田はその写真を保存した。サイトのページ上にある、おなじ場所で撮影された写真はすべて保存していく。  そこは知っている場所だった。  以前、訪れたことがある。  そのころはまだ、少ないがひとが住んでいた。地主一家と、ゆくあてのない老人が何世帯か。ほかには廃屋が並び、買い物にも事欠く場所だった。  足を運んでいっても楽しみを見出せそうにない場所でも、そこに知己でもいれば出かけることになる。  芝田の場合、そこに親類がいたのだ。  Mという独居老人で、病を得て死期が近くなっていた。  彼とはまったく交流がなかったし、芝田の家は元来つき合いのある血縁者があまり多くない。数人つき合いのあった親類はいまではみな故人になり、現在では皆無となっている。
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