2

5/14
前へ
/62ページ
次へ
 老人は一度は現地の墓に入るという。  それが先祖への義理立てであるといい、それからの移転を希望していたのだ。  芝田はさておき、両親は先方に出向いて、何度か打ち合わせもしていたはずだ。  M老人の――彼の先祖の墓は、無事都内の某所に移されている。  誰も墓参りするものはない。  すでに芝田の両親は亡く、芝田以外に墓の存在を知るものは残っていないはずだった。そして芝田といえば、故人にもその墓にも興味はない。  ――あそこは廃村になったのか。  意外でもなんでもない。  へえ、と鼻を鳴らし、芝田は写真を次々と表示していく。  現れた風景に、液晶画面を滑っていた指が止まった。  芝田がその土地を訪れたのは一度きりだ。  両親に声をかけられても、二度とその土地を訪れなかった理由が現れていた。  煤けた色味になっている鳥居が映し出され、その先はぼうぼうの草むらだ。  背の高い雑草に隠れるようにした社殿が、はっきりと鎮座している。  昔そこを訪れたとき、芝田は神さまに出会っている。  醜いそれと、それの背後に隠れるようにしていた少女の姿を思い出す。
/62ページ

最初のコメントを投稿しよう!

12人が本棚に入れています
本棚に追加