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 まだおさなさのある少女の声が重なり、芝田は返事をしそうになった。応でも否でもなく、放って置いてほしいと叫びそうになる。だが芝田の舌はうまく動かなかった。ほそい音を立てて息を吐いただけだ。 「にげて」  急に芝田は、声のいうとおりだと悟った。  ここにいないほうがいい。  さっさと逃げてしまったほうがいい。  決意し覚悟をかためて顔を上げると、先ほどより近い場所に神さまの顔がある。  ひ、と短くちいさな悲鳴が出た。  その音を確かめようとでもいうのか、醜い神さまは芝田に顔を近づけてきた。  目と鼻の先にある醜怪なそれが、ぐずぐずとなにかを嗅ごうと動く。  顔を背けた芝田の意気地は、すっかりくじけていた。逃げ出すつもりになっているのに、足に力が入らなくなっている。 「はやく」  うつむいた頭に急かす声がかかり、焦りがつのった。  うるさいと声を荒げそうになってしまう。  ひざが笑い、ひたいから流れ落ちた汗が地面に落ちるのを芝田は目にしていた。         ●  ほかの人々の目には、それらは映ることがない。
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