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しかし芝田はその場に残っているものだとか、誰かを憎む黒いものだとか、そんなものをとらえてしまう。
ていどの差はあれ、それらはどこにでもある。
駅の改札に、コンビニの棚に、横断歩道の二歩目の地面に。
いくらでもある。
だから芝田はまともな職に就くのはあきらめた。
かわりに、カメラを手に出かける。
そういったものの存在を知っていたり、信じている人間たちがいるのだ。そしてそれを写し取りたくても、写し取れることができない。
芝田は写し取ることができた。
彼らに代わり、芝田は写し取れる場所を渡り歩く。
どれだけ撮っても腕の上がらない永遠の素人であり、カメラの腕には早々に見切りをつけている。
禍々しいものを写し取るときに、天性の才も真摯な姿勢もひたむきな熱意もいらなかった。
美しい精錬としたものを写し取ろうとするなら、それに見合った腕がいるかもしれない。
芝田がのぞきこむファインダーにあるものは、そんな上等なものではないのだ。
いやになるようなものが、四角いファインダーに鎮座する。
シャッターを切る。
芝田はそれを印画紙に焼きつけ、欲しがる相手に届ける。
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