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「ですが……なにか、ちょっとしたヒントのようなものでもあれば」  そわそわとした態度のN氏は、テーブルの上で両手の指を組む。そしてほどき、また組み直す。  まっすぐ背をのばし前を向いていれば、それなりの見栄えになる男性だ。しかし彼はうつむき背を丸め、ときどきなにかをうかがうようにあたりを見回す。  そのすばやい動きは、ひとによってはひどく気に障るものだろう。  彼はその自覚があり、他人と衝突しないよう独りでいることを選んだ、と語ったことがある。  他人と衝突せずに彼が暮らしていられるのも、莫大な財を持つからだ。その財の一部が芝田に流れこんでいる。  ありがたい相手だが、最近の彼は少し面倒な存在になっていた。距離を置いたほうがいいかもしれない。  芝田はこちらを見つめる彼の輝く双眸に、そう思う。 「先日いただいた写真は、S沼のあたりで撮影されたようですが……撮影に同行されないのですか? 助手のような」  場所は教えていなかったが、S沼で正解だった。 「いえ、私はお届けに上がるだけなんです。お力になれず申しわけありません」  首のあたりに、芝田はちりちりとした感覚を覚えていた。
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