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酔っ払いの魔塔主と名前のない道化師
――パァン、と銃声が響いてあたしは音のした方に目をやった。
舞台上にはライフル銃を構えた男性と大蛇を首に巻き付けた女性。撃たれたのは大蛇らしく、体に絡みついていた胴体はだらんと重そうに首にぶら下がる。女性の足元で蠢く数匹の蛇が男に襲いかかろうとしたとき、銃声が立て続けに鳴り響いた。そこかしこで光が弾け、撃たれた蛇は投げ捨てられたロープのように舞台上でぐったりとなる。
「蛇の住処に迷い込んだ男が、悪魔の使いである大蛇を殺して女性を正気に戻すという、演劇仕立てのショーです」
ノードの視線はライフル銃を構えた男性に据えられていた。
女性は大蛇をぐるぐる回して客を笑わせ、それを見た男性は「この女は頭がおかしいのか?」とでも言いたげに首を振る。そこで女性がはたと男性の存在を思い出し、駆け寄って抱擁を交わすと観客席からはやんややんやの拍手喝采。
「ノード、あの蛇は死んじゃったんですか?」
現代なら動物愛護団体が抗議デモを起こしそうだ。
「エドが言ったでしょう? あの銃弾は撃たれた魔獣を麻痺させるものです。ほら、見て下さい」
促されて舞台に目を向けると、大蛇がムクッと頭をもたげた。他の蛇たちもウネウネと動き出し、舞台の反対側では男女が大袈裟なジェスチャーで驚いている。観客席からは悲鳴と笑い声。
「昔やっていた蛇のショーは毒蛇を投げナイフで仕留めるものでしたが、実際に殺していたので蛇を仕入れるのもひと苦労だったようですよ」
「でも、あの蛇たちは死なないけど毎回撃たれるんですよね。それもかわいそう」
ノードは酔ってるせいか普段見せない緩い笑みをあたしに向ける。ワイングラスに手を伸ばし、空だと気づいてその手で髪をかきあげた。
「あの弾は撃たれても痛くないんです」
撃たれても痛くない?
「あの銃の肝は本体ではなく弾です。ナリッサ様襲撃に使われたというマナ弾は、マナ蓄積量の高いマナ石があれば魔術師でなくとも作れます。しかし、ショーで使われた弾に付与されている魔術はかなり複雑です」
「麻痺の魔術ですよね?」
「あ、ちょうど出てきました。彼が説明してくれますよ」
ノードは顎をしゃくって舞台を指し示した。フクロウ魔獣のリーゴを連れて現れたのは道化師のゼン。
「さてさて、悪魔の手先をやっつけて抱きあう男女がここに一組。しかし悪魔というのはどうにもしぶといものでございます。一度死んでもまた蘇る。さあ、ここは名前のない道化師のわたくしめにまかせてお逃げなさい。わたしには名前だけでなく抱きあう相手もおりません。独り身のわたしに何を思い残すことがありま――」
演説の途中で男女はあっさり舞台袖へ逃げ出し、客席にひと笑い起こったところで道化師はゴホンと咳払いする。舞台中央へ歩いて行くと、蠢く蛇に動じることなく「おや」とリーゴを乗せた右手を掲げた。
「わたしには抱きあう相手はおりませんがここに頼もしい友人がおりました。このフクロウ魔獣リーゴに悪魔退治をしていただきましょう」
リーゴは空に放たれ、道化師は蛇を挑発するようにダン、ダン、と床を足で踏み鳴らす。大蛇が道化師めがけて襲いかかろうとしたとき、リーゴがバサッと羽ばたきをして魔力を放った。
大蛇とその周りにいた蛇たちはライフル銃で撃たれたときと同じくバタバタと舞台に伏し、団員たちがスパゲッティをくるくるフォークで巻くように蛇を回収する。リーゴは悠々と観客席の上を旋回したあとゼンの腕に戻った。
「勇者が帰還したところで少し魔法具の説明をさせていただきましょう。では、復活した悪魔を前に敵前逃亡した元勇者様もお越しいただけますか?」
客席の笑い声に迎えられ、さきほど退場した男性がライフル銃を手に再び舞台に現れた。
「彼が大蛇退治に使ったこの魔法具はフクロウ魔獣のリーゴが見せた力と同じく相手を気絶させるものでございます。わたくし、道化師ではありますが魔獣の魔力に興味があり研究を続けていましたところ、フクロウ魔獣が小動物を気絶させる仕組みを解明してしまいました」
道化師の意外な一面にどよめきがおこる。
「魔獣が放つ魔力は魔獣の種類によって異なります。みなさんもご覧になったように、白虎のコトラは冷気を、イタチ魔獣は熱波を放ちます。そしてフクロウ魔獣が放つのはマナ振動波。敵の体内のマナ循環を一時的に撹乱させ、気絶させるのです」
そこで言葉を止め、ゼンはポケットから何か取り出して観客席に向けた。皇族席からだと遠すぎて何を持っているのか見えない。
「彼の使った魔法具を、わたしたちは〝銃〟と呼んでいます。今わたしが指でつまんでいるこの小さな弾が銃の先から発射され、相手にぶつかったところで魔術が発動する仕組みです。弾には魔術と魔力が付与されているのですが、ひとつは弾を発射するための着火の魔術。聞き慣れた言い方だと火炎魔法です。それから魔獣に当たったときの痛みを解消する魔術。衝撃吸収と万が一のため治癒魔法も付与しています。そして着弾と同時に魔力が放出されマナ振動波により敵は気絶する、というわけです。なかなか細かな仕事をしているでしょう? みなさん、遠慮せず褒めてくださって構わないんですよ」
魔術師が手をあげて拍手を要求すると、ノリのいい観客たちは歓声と指笛で答えた。
「実際はもっと手の込んだ細工をしているようです」と、ノード。
「着弾時に発光させたり、銃声を聞き心地のいい音に調整したり。日用魔法具に付与するような魔術よりよほど複雑で、ある意味芸術品です」
「そんな腕があるのなら、あんな中途半端な銃は作らないだろうな」
ジゼルは感心した顔でゼンを見下ろしていた。〝中途半端な銃〟というのはナリッサ襲撃に使われた銃のことだろう。
「そうですね」
ノードはうなずく代わりに手を伸ばしてジゼルの額をなでる。
「ゼンなら最低でも音は鳴らないようにするでしょう。銃本体に消音魔術を付与すればよさそうですからさほど面倒ではありません。ですが、弾と本体両方に魔術付与し、さらにそれぞれに付与する魔術が複数となるとバランス調整がかなり難しいです。魔術付与した銃弾が出回っているなら、相当な高額で取引されていると思いますよ」
ということは、
「ゼンはバンラードに行ったらボロ儲けできるってことですか?」
あたしが聞くと、ノードの眉が不機嫌そうにピクッと動いた。
「ゼンは小説に登場したんですか?」
「してないですけど」
「それならなぜ呼び捨てに?」
ケケッとジゼルが笑った。
「魔塔主、さすがに誰彼構わず嫉妬するのはどうかと思うぞ」
「嫉妬?」と、あたしとノードの声が重なった。
「嫉妬ではなく心配しているだけです。サラさんは誰にでもふらふらついて行きそうですから」
「ふらふら他の男について行くなというのを普通は嫉妬と言うんだ。知らないのか? 魔塔主」
ノードは子どもみたいにプイッと顔をそむける。コロコロ表情が変わるのはワインのせいだろうか。
あたしとジゼルが召喚された日の夜もノードは酔っていたけれど、小説に魔塔主が酔っ払うシーンなんてなかった。皇女ナリッサの前では意識して〝魔塔主〟の顔を保っていたのかもしれない。
――なら、ミラニアの前では?
ほんのり赤く染まった頬に触れようとしたら、冷気を感じたノードがこっちを振り向く。引っ込みがつかなくなったあたしの手をノードが掴んで降ろした。
「捕まえておきたいという気持ちがないわけではありません」
「えっ?」
これって、愛の告白?
「まあ、わかる」とジゼル。
なにこの突然のモテ期!
「ぼくも魔塔主も、関わった人間は自分より先に死ぬ。あっという間にな。寂しいわけではないが、虚しくなることはある。その点、主はもう死んでいる」
言われてみれば納得だけど、主はもう死んでいる、なんて経絡秘孔を突いたあとの決め台詞みたいな言い方しないでほしい。
「魔塔主がゼンとやらに主とピアスの関係を尋ねようとしているのはそういうことだろう? 主が消えないという確信が欲しいんだ。違うか?」
ふとノードの言葉が脳裏に蘇った。
――怖くなったんです。サラさんが。サラさんがいるのが当たり前になることが。
彼がそんなふうに言ったのはいつだっけ?
たしかあたしが家出したとき……と記憶を手繰ろうとしたら、パッと目の高さに光が灯った。あたしたちは一斉に顔を向け、帆の畳まれたマストの上にラビを含め三人の団員が立っているのを見つける。
ラビの演目は空中ブランコというよりも船に張り巡らされた綱を渡るターザンのようだった。
手元で長さ調節できるロープを使ってマストの上段から下段へ、下段から上段へ。一番小柄なラビが一人の団員の手で放り投げられ、縄にぶら下がるもう一人の団員がキャッチする。
ラビのしなやかな動きに見入っていたら、不意にノードの指先がピアスに触れた。意識と世界の境界がぼんやりと滲むような不思議な感覚――それは幻のように一瞬で、ノードの指先はついでのようにあたしの頬に触れて離れた。彼の目はラビを追っている。
「ねえ、ノード。ラビ以外のふたりも獣人ですよね?」
彼は「ええ」とうなずく。
「観客のほとんどが心のどこかで獣人ではないかと考えているはずです。普通の人間にこんなことできませんから。でも、あえてその疑問から目をそらしている」
「皇室公認だからか?」とジゼル。
「これが獣人によるショーだと認めたくないからです」
「なるほど、魔塔主が嫉妬だと認めないのと同じか」
「認めたでしょう?」
え? 認めたの?
「疑問から目をそらすつもりはありません。だからサラさんとゼンには直接会ってもらいます」
「だが、あの男に主の姿は見えないだろう?」
「魔力がゼロですからね。でも、実際会ってみないことには分からないでしょう?」
噂をすれば、というタイミングでコトラに乗ったゼンが舞台に現れる。
赤銅色の半月はすっかり高い位置に昇り、サーカス公演はそろそろ終わりに近づいていた。道化師は舞台に集まってくるサーカス団員を一人ずつ紹介し、滑らかな舌でショーの最後まで観客を湧かせ続ける。
「あの男は口から生まれたんでしょうね」
ノードは亜空間ゲートから取り出した小さな紙に『青い月が沈んだら』と書くと、鼻歌をうたうように詠唱して魔術を付与した。
「ノード。それ、もしかして転移魔術付与巻物ですか?」
「招待状です」
彼はニコッと笑い、もう一度亜空間ゲートを開いて小さな巾着袋を取り出した。チャリと音がしたから中身はおそらく硬貨。くるくる巻いて紐で縛ったおみくじみたいなスクロールをその袋に入れる。
「ジゼル殿、お遣いを頼んでもいいでしょうか。あの道化師と白虎にチップを」
ジゼルは面倒くさがるどころか目を輝かせ、奪うように袋をくわえるとあっという間に手すりから飛び降りた。
「猫だ!」
子どもの声。舞台上のサーカス団員たちも気づいたらしく、通路を駆け下りる白猫に視線が集まった。ジゼルは身軽な跳躍でストッと舞台にあがると、ちょこちょこと短い脚で歩いて道化師の足元まで行く。
「おや、このかわいい白猫はどうやらあちらのお客様のお遣いのようです。お心遣いありがとうございます」
ゼンはシルクハットを脱いで皇族席に向かってお辞儀し、ノードは片手を軽く挙げてそれに応えた。ジゼルは意外にもまっすぐ通路を駆け戻り、客の頭を踏み台に皇族席の手すりに飛び乗ると観客席から拍手がおこる。
どうやら観客が最後にチップを渡すのは慣習らしく、いつの間にか舞台のまわりは花束や贈り物を手にした客で溢れ返っていた。
「おい、魔塔主」
ジゼルはソファに飛び乗ると、あたしとノードの隙間にお尻をねじ込んだ。
「あの召喚獣は上級じゃないのか? しっぽに巻いてる紐は魔力抑制具だろう」
上級ってことはジゼルより強いってこと?
「おや、ジゼル殿。怖気づいたのですか?」
「そういうことじゃない。あいつに主の姿が見えてるんじゃないかって聞いてるんだ」
ジゼルの言葉であたしが反射的に舞台に目をやると、当のコトラと視線がぶつかった気がした。
「ノード、やっぱり見えてるんですか?」
「さて、本人に聞いてみないことには」
お楽しみは後で、とでも言いたげな顔でノードは立ち上がり、「行きましょう」とあたしに手を差し出す。
「どこにですか?」
「ゼンとコトラとの待ち合わせ場所です」
舞台を囲んでいた客は席に戻り、団員たちが一斉にお辞儀をすると船はひときわ大きな歓声に包まれた。ノードに手を引かれたあたしは歓声を背後に聞きながら通路を歩いて船尾側に回る。ジゼルも大人しく後ろをついて来た。
舞台の喧騒からほんのわずか遠ざかるだけで、波の音と虫の声、それに風の音が耳に届く。右手に見える切り立った崖は、洞穴のそばにあったあの崖だ。
「ノード、洞穴で待ち合わせてるんですか?」
「いえ、違います」
ノードは手すりからヒョイと顔を出して下をのぞき込んだ。
「二人ほどいますが、面倒なので見なかったことにしましょう。わたしを酔わせたのはエドですから、多少のことは見逃してくれるはずです」
そう言うと手をかざしてゲートを開き、夜闇に青と黒の光が渦を巻く。あたり前のように招き入れられたローブの内側がいつもより温かい気がしたのは、やっぱりノードが酔ってるからだろうか。ジゼルは「お先」と躊躇いなく光の渦に飛び込んだ。
下から「なんだあの光?」と聞こえた瞬間、ノードがクスッと笑い声を漏らして視界から夜空が消える。ゲートの中は夜のような色をしているけれど、夜というより深海か水族館にいる気分。
「団員の前でゲートを使うなってエドに言われているのですが」
「見られましたね」
「エドに酔わされたので仕方ありません」
無自覚なのか意図的なのか、ノードは冷気を求めるようにあたしの頬に自分の頬をくっつけた。ワインの匂いがする。
「耐冷魔術を付与した服はお酒を飲まないときにしないといけませんね。今夜はサラさんの冷気が気持ちいいです」
ドキドキしてるのはあたしの心臓じゃなくてたぶんノードの鼓動。魔法でアセトアルデヒドくらい簡単に分解できそうなのに。
「魔塔主様はすっかり酔っ払いですね」
「お酒を飲んだら酔うのは当然でしょう? 酔えないお酒はお酒じゃありません」
フフッ、と上機嫌な笑い声。ノードが喋ると耳がくすぐったい。
「これからゼンと会うのに大丈夫なんですか?」
「酔ってるくらいがいいんですよ」
ノードの頬が離れて紺碧の瞳があたしをのぞき込んだと思ったら、周囲に渦巻いていた光がスーッと消えて闇に包まれた。ゲートを出たと分かったのは、暗闇でも見える幽霊スキルのおかげ。
そこは窓もランプもない真っ暗な部屋だった。足元でジゼルがキョロキョロとあたりを見回している。
「魔塔主、明かりを点けてもいいか?」
「はい。おまかせします」
ジゼルが短く何か唱えて尻尾を振ると、壁際のキャンドルにパパパパッと炎が灯った。電気照明ともマナ石ランプとも違う、ゆらゆら揺らめくオレンジ色の光。
「ノード、ここって……」
両開きの扉がひとつと机と椅子。壁に留められたセピア色の写真に写るユーリック。その胸のあたりには釘が刺さっている。部屋の四隅に水晶の原石のような大きなマナ石。
ノードは行儀悪くヒョイと机に腰かけ、片膝を立ててあたしを見た。それは、あたしがこの世界に来て初めて目にした光景。
「あっ、ジゼル殿。置いてあるマナ石からマナを吸収したら弁償してもらいますよ」
扉近くのマナ石に向かっていたジゼルが「バレたか」みたいな顔で振り返った。方向転換してノードのいる机に飛び乗ると、ユーリックの写真に刺さった釘をツンツンと前足でつつく。
「魔塔主、ここはぼくらが召喚された部屋のようだが、この建物はいったいどこにあるんだ?」
「魔塔の敷地内にある鐘楼の地下です。魔塔の林を知り尽くしたジゼル殿なら場所が分かるのでは?」
「ああ、あそこか」
ジゼルはうなずいているけれど、あたしにはどこか分からない。魔塔にいるとき午前と午後に一度ずつ鐘の音が聞こえていたけれど、三角屋根から見渡してみてもそれらしい建物は見えなかった。
「ここら辺は魔塔の林というより魔塔の森だろう? こんなところにどうやってナリッサを連れて来たんだ?」
「ゲートじゃないの?」と、あたしは首をかしげる。
「あの日、ナリッサを送り届けたのは魔塔主ではなかった。ということはゲート以外の方法で出入りしているということだろう?」
「あ、そっか」
ナリッサがこの部屋を出て行ったあと、あたしとジゼルはゲートで魔塔に行った。それからノードはやけ酒して眠り、夜が明けたんだった。
「スクロールですよ」とノードが言う。
「頻繁にゲートで石榴宮に出入りしていたらいずれ誰かに見つかります。わたしが行くよりナリッサ様の都合が良いときに来てもらうほうがいいですから。ちなみに、転移魔術付与巻物はグブリア帝国では認可されていないのでユーリックたちには知られないようにして下さい」
「便利な魔法具だと思うが、魔術嫌いにもほどがあるな」
呆れたようにフンとジゼルが鼻を鳴らすと、「違いますよ」とノードが苦笑する。
「そもそも製造許可申請していないんです。他国の技術を大っぴらに盗むわけにはいきませんから」
「他国の技術? あの道化師が作った魔法具だろう?」
「ゼンはグブリア帝国の人間ではありません。二百年前の戦争を境にグブリア帝国の地図から消えた、ある島国の出身なんです」
島国?
地図から消えた島国なんて、小説には絶対登場していない。
魔力ゼロで、魔術が使えて、なぜかリンカ・サーカス団で道化師をしている、小説に登場しない島国出身のゼン。
あまりの怪しさに警戒心がむくむくと湧きあがってきたとき、部屋のどこかでパッと光が弾けた。
「思ったより早かったですね」
ノードが笑みを向けているのはあたしの背後。振り向かなくても気配でそこにジゼルではない召喚獣がいると分かる。
「チップで金貨を三枚も渡されたら誰でも駆けつけますよ。その白猫ってあの時の召喚獣ですよね。やっぱり皇女様と契約されたんですか?」
口調は違うけど、背後から聞えてきたのはサーカス船で耳にした道化師の声。
振り返ったあたしが見たのは白塗り赤鼻の道化師ではなく、茶色のローブをはおったアジア人っぽい切れ長の目の男と、彼の腕に抱かれた子どものホワイトタイガーだった。
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