終章

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「そう。ただあのビードロを見た朔太郎さんは、ああいう水を呼ぶ力があるもので『変革』は起こせるってことに気がついた。だから、まあ事は、一歩は前進してたんだけどね。そんで、朔太郎さんはそれをとうとう見つけた。そうして、実行に出たのが五日前ってことさ」  蒼は呆然とした様子でそれを聞いていた。そんな蒼を見てか、すずと菊彌の語りを横でただ聞いていた玄介は、にんまりと笑って口を挟む。 「そんで、すずの怖い顔ってやつだけどな、」  玄介のその言葉に、すずが少しだけ罰の悪そうな顔をした。 「やっとこれで、仕事が片付くって喜んでる顔だったってわけだ」  と、蒼は、その顔から表情という表情をすとんと落としたような真顔になってしまった。玄介の言葉を、自分の中で何度も何度も反芻しているのかもしれなかった。が、それでも理解には至らなかったらしい。蒼は真顔のまま、こてん、と首を折った。 「どういう、ことです?」  今度は、菊彌が引き継ぐ。 「すずさんと玄介さんは、その内容は俺は詳しくは知らないけど、朔太郎さんに大きな貸しがあった。だから、ゆきさんを解放する方法を調べるのに協力してて、結構忙しくしていたらしい。で、ようやっとビードロを見つけて、この件にようやく目途が立ったわけだ」  蒼は、なるほど、と小さく頷く。 「で、ようやく、忙しい生活に終わりが見えたわけで。このままこうしてこの件が片付いてくれれば、やっと、延ばし延ばしにしてた祝言も挙げられる、ってわけさ」 「……え?」  今度こそ、蒼は声を出した。が、結局は、問い返す言葉だ。 「祝言?」 「そう。すずさんと玄介さんの、祝言だよ」 「え?」  蒼の目が、のろのろと玄介を見、それからすずを見る。玄介はにまにまと笑っている。すずはと言えば、気まずげに視線を逸らしながら、ほんの少しだけ、耳の淵を赤くしていた。 「すず様と玄介様の、祝言……」  蒼はもう一度そう繰り返す。  蒼が自分がずっとしてきた勘違いにようやく気がつき、すずに深々と頭を下げるまで、あと少し。
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