0人が本棚に入れています
本棚に追加
わたしにはお兄ちゃんがいた。
登校するしたくを終えて、家を出る。
玄関の鍵を閉めると、先に出ていたお兄さんがわたしにむかって手をさしだした。
「では行こうか、そよ」
「手、つながないよ」
「なぜだ?」
「ここでは、大きくなった兄弟が手つないで歩いたりはあんまりしない」
「そうなのか? 難儀だな。妹が迷子になったらどうするんだ」
「心配なのは弟くんでは?」
「弟は心配ない。どこにいてもわかる。おまえの方が心配だよ。僕もこの不自由な身体にいては、近くにいなくては守れない」
わたしたちは話しながら、高校にむかうため歩き出す。
「それに、どちらかというとお兄さんの方が道わからないのでは。来たばっかだし」
「そんなことはない。いちやの記憶にあることはちゃんとわかる」
「そっか」
最初のコメントを投稿しよう!