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「バンカラっていうんだね、この学生服スタイル。基本的に男性用だと思うけど、僕でも着られるなら着てみたい」  僕が選んだのは、今の時代にも普通に見かける――それこそ僕やメイくんが中学校で着ているものと変わらない学ランを基調としたスタイルだ。ハイカラさんと同じくらい有名だと思うんだけど、バンカラという名称がついていることは、はじめて知った。  学生服に学帽、そしてマントと高下駄(たかげた)。昔のマンガとかでよく見る、不良とか番長とかって言われているキャラクターが好んで着るような印象だけど、僕としてはそんなに悪いイメージは持っていない。なので、ヒノモトで着ることができるのなら挑戦してみたいと思った。 「超メジャーなやつじゃん。決め手はなんですか」 「めちゃくちゃ動きやすそうだからです」  そう。僕がいま着ている巫女服は、とにかく歩きづらいのだ。全力で走ろうとすると、袴が足にびたびたくっついて転びそうになってしまう。  バンカラに決定したことで、さらに画面の表示が切り替わる。驚いた。服の色だけじゃなく、柄のデザインや丈の長さまで、あらゆる部分がとことんカスタマイズできるらしい。 「すごいね、こんなに細かく選べるんだ。メイくんも迷ったでしょ?」 「色の組み合わせとか、そのくらいしか変えてないけど。――夏樹、髪型いじるならオレが選んでもいい?」 「うん? 別にいいけど」 「ラジオ巻きにして。三つ編みを耳のあたりでまとめたやつ」 「ラジオ巻き……あ、これか。なんかモコモコの耳当てをつけてるみたいだね」  メイくんに言われるまま、設定を変えてみる。プレビュー画面に表示された着せ替え人形の髪型が、ラジオ巻きに変化した。どうしよう、想像以上にかわいらしい。これに男性用の学生服を合わせるのは、ちょっとおかしくないだろうか。 「ねえ、メイく――」 「ズボンの丈は膝上にして」 「ん?」 「タイツは……あー、ないほうが色のバランスがよさそう。足元は編み上げブーツ一択ね。下駄や短靴(たんぐつ)は却下」 「んん?」  まずい。よくわからないけど、メイくんがノリノリだ。決めるのは髪型だけじゃなかったんだろうか。なぜかそれ以外の部分まで指定してくる。  そして、ここではじめて気づいてしまった。今までは「考えるだけでウインドウの操作ができるなんて便利だなあ」くらいにしか思っていなかったけど、それって実は不便なんじゃないかってことに。現に今、僕が頭の中でメイくんの要望をくり返すと、着せ替え人形のコスチュームがどんどん変化していってしまう。勝手に、どんどん、かわいくなってしまう!
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