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「……ここは?」  目を開けると、白一色の世界だった。上も下も前も後ろもわからないような空間に「あなたは死亡しました」という、シンプルな黒い文字だけが浮かんでいる。  死。そうか、僕は死んじゃったんだ。ゲームの中の出来事とはいえ、目の前にその事実を突きつけられると心臓がキュッとする。  それなのに、現実世界ではこの言葉がとても身近にあるような気がした。それこそアクションゲームやロールプレイングゲームを遊んでいるとき。友達同士でふざけているとき。インターネットを使っているとき。あまりにも軽く使われすぎていて、それが本来はどんなに重い言葉なのかを、つい忘れてしまう。  ため息をひとつ落としてから、改めて現状の確認をする。僕の死因は《毒》状態になったことでのスリップダメージによるものだ。もちろん痛くはないし、怖いという感覚はなかった。むしろ、誰かを助けることができたかもしれないという満足感だけが残っている。 「あの鬼は、無事だったかな」  鬼面を《瀕死》状態から回復することはできた。でも、そのあとで鬼面がどういう行動をとったのかはわからない。泉から上がれば《毒》状態からは回復できるけど、ひょっとしたらあのまま居座り続けて、結局は死んでしまうのかもしれない。 「……無事だったらいいな」  ここで僕がいくら考えても、答えは出ない。なんだかすごく疲れたので、このままゲームをやめることにする。 「拠点に戻る」という選択肢の隣にある「ログアウトする」を選択して、僕は真っ白な世界から現実世界の自分の部屋へと帰っていった。
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