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「待って待って、体力の減りが早すぎない? 攻撃なんていつの間に受けたの?」  いまはコロとパーティを組んでいるので、ステータス画面で彼の体力ゲージがバッチリ確認できる。ずっと注意して戦況を見ていたはずなのに、いつの間にか覚えのないダメージを受けているから驚いてしまった。 「メロンカッパンの攻撃なんかくらうわけねぇし。削れてるのは術技(じゅつぎ)を使ってるからだよ」 「え? 歌舞伎役者の術技って、そんなだっけ?」 「んにゃ? 鬼面の呪い」 「……それって、警察に追われるよりも厄介な呪いなんじゃ。相手の攻撃を受けても減って、自分が攻撃をしても減るってなったら、体力の回復が間に合わないでしょ」 「そそ。だからアイテムの消費がヤバい。クールタイムのせいで強敵相手は厳しいし、お金もすぐなくなる」  《クールタイム》というのは、術技やアイテムを使ったあとに、また同じ行動をとろうとしても、しばらくは使えなくなるという時間のことだ。「ここで回復アイテムを使わないと危ない!」というときでも、クールタイムに邪魔されて使えずに死亡、なんてことも普通にある。  メロンカッパンの頭突き攻撃を軽々とジャンプでかわし、水鉄砲攻撃を地面に胸がつくくらい身を屈めて避けながら、すばやく手刀をくらわせるコロ。あ、本当だ。コロが術技を使った瞬間、体力ゲージが減少した。このペースだと、もうそろそろ赤くなってしまう。 「――百華祝詞 《白露玉》」  僕は神楽鈴を大きく振って涼やかな音を響かせると、コロと初めて会ったときにも使った術技を発動する。《八重桜》が、一度にそこそこの体力を回復させる術技なら、この《白露玉》は一定時間ごとに少しずつ体力を回復する。つまり、毒の回復版みたいなものだ。  ステータスウインドウを確認すれば、コロが術技で消費する体力よりも、僕の術技での回復量のほうがわずかに上回っているようで、ゲージが少しずつ上限値にせまってきている。《八重桜》と《白露玉》の術技を交互にかけ続ければ、コロに回復アイテムを使わせなくてすむかもしれない。 「お、さっすが巫女。やっぱ回復役がいると違うな、ダンゼン動きやすい」  その言葉どおり、コロの動きがいっそうなめらかになる。体力管理に気を回さなくていい分、攻撃に集中できるからだろう。  回復しかできなくても、回復ができるからこそ役に立てることもあるんだ。僕でもちゃんと貢献できることがうれしくて、自然と笑顔になってしまう。すると肩の力がスッと抜けて、落ち着いて戦闘を眺める余裕も生まれた。
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