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「ホントに楽しそうだなあ、コロ」
メロンカッパンを相手に無双するコロは、とにかくうれしそうだった。メイくんも戦闘が好きなタイプだし、ときおりギラギラした笑顔を見せるときもあったけど、それとはまた違う気がする。
コロは戦いそのものよりも、どこまでも自由に動けることを喜んでいるように見えた。人間の身体というのはここまで柔軟にできているのかと、感動せずにはいられないほど伸びやかに踊っている。
そうだ、踊りだ。倒すとか勝つとか、そんなことが目的なんじゃなくて、コロはただただ楽しく踊っている。
「すごい……」
目の前の舞台に夢中になってしまった僕は、周囲への警戒を完全に忘れていた。そもそもメロンカッパンは非アクティブという、こちらから攻撃しないと攻撃をしてこないタイプの物怪だ。回復役の僕のことなど、たまにじっと見つめてくるだけで基本は何もしてこない。
だから、背後から別の物怪が近づいてきていることも、それがメロンカッパンよりも一回りも二回りも大きいアクティブなカッパンだなんてことにも、僕はまったく気がつかなかった。
「ハルキ、そのまま!」
「ひゃい!」
コロの突然の号令に、頭よりも体が反応した。棒立ちになって固まる僕の上を、コロがものすごい速さで飛び越えていく。やがて、すぐ背後から「キュエッ」という甲高い悲鳴が上がった。
「な、なに?」
「キングメロンカッパン。やーっとのお出ましだな、待ちくたびれたぜ」
どうやらコロの蹴りの術技で倒されたらしい。振り向くと、見たことのないカッパンが地面に倒れていた。見た目はメロンカッパンと変わらないけど、僕よりも大きいうえに頭に王冠を被っている。
「キングメロンカッパン?」
「そそ。メロンカッパンを大量に倒すと、一定確率でキングが出現するんだよ。俺が欲しかったのは、こいつの持ってるレアアイテムで……お、ラッキー。一発でドロップした」
なるほど。ここで狩りをする目的が、ちゃんとあったのか。ウインドウで戦利品を確認しながら、コロが「火属性の攻撃を一度だけ無効化するアイテムなんだけど、コレがどうしても欲しくて」と説明してくれた。「ハルキもいる?」と聞かれたけど、僕にはまるで使い道が思いつかないので首を振る。こういうのは本当に必要な人が持っていたほうが絶対にいい。
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