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「コロ! あのね――、っと? あれ?」  決意を固めて身を乗り出した僕を制止するかのように、目の前にウインドウが表示される。そこに書かれていた文字は――猫又が、孵化します? 「こ、コロ! 孵化する! 猫又の卵が孵化します、って!」 「お、キングメロンカッパンの経験値が効いたか? ボックスから出してみろよ、生まれるところ見たい見たい」  慌てながらも慎重に、袖口から卵を取り出す。薄い殻越しに(だいだい)色の光が透けてみえて、まるで小さなランプみたいだ。ほんのりと温かいそれを、両手で作ったお椀の中に入れて、コロにもよく見えるように胸の辺りで掲げる。光が点滅する間隔がどんどん短くなり、やがて視界が真っ白に染まった。 「みゃあん」  なんともかわいらしい鳴き声に誘われて、硬く閉じていたまぶたを開ける。  そこにいたのは、てのひらサイズの小さな猫だ。卵と入れ替わるように、ちょこんと座っている。全体的に丸っこくて耳がぺたりと折れた姿は、まるでスコティッシュフォールドみたいだ。でも、薄い桜色の毛並みと、二股に分かれた金魚の尾びれのような尻尾が、この猫が普通の猫じゃないことを物語っている。  うるんだ瞳でこちらを見上げて、小さな声で何度も何度も鳴く姿が、なんというか、本当に、本当に――、 「か……かわいい……!」 「おいおい、ピンクの猫又ってなんだよ。属性どうなってんだ、ちょっと見せて」 「みゃー!」 「いてっ」  片手でひょいっとつかみ上げて、お腹のあたりをのぞき込もうとするコロの顔に、猫又の尻尾攻撃が炸裂した。オーロラみたいにユラユラしていて綺麗だと思っていたけど、あれって当たると痛いのか。いや、ヒノモトでは痛みは感じないから、実際には熱いとかだと思うんだけど。  鬼の面越しに顔を抑えるコロを尻目に、猫又はとんとんと身軽に僕の右腕を駆け上がる。そのまま肩までやってくると、甘えるように頬にすり寄ってきた。 「か……かわいい……フカフカしてる……」 「だまされるなよ、見ただろ。キョーアクだぞ、そいつ」 「今のはどう考えてもコロが悪いでしょ」 「みゃっ」  まるで僕の言葉を理解しているかのように、猫又が大きな声で鳴く。多勢に無勢となったコロは拗ねて唇をとがらせるが、すぐに「まあとにかく、無事に孵化してよかったな」と笑った。
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