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「コロが卵を見つけて拾って大事に持っててくれたお陰だよ」 「そそ、そういうこと。ソイツにも、ちゃーんと教えてやってくれ。じゃあ俺は、そろそろ落ちるな」 「あ、うん。お疲れ様」  結局、僕が本当は女の子じゃないということは切り出せなかった。また今度、落ち着いて話をしよう。そう決意した僕は、次にまた確実に会える方法をコロに提案する。 「ね、コロ。フレンド登録しない?」  フレンドリストに登録すると、相手が大体どの辺りにいるのかとか、ログインしているかどうかがわかって便利なのだ。メッセージも簡単に飛ばせるから連絡がつきやすく、パーティも組みやすい。  たとえばこれが現実世界だったら、相手に「友達になろう」と言うのはなかなかハードルが高いと思うんだけど、これはゲームの中のシステムの話なのでそこまで緊張せずに持ちかけられた。リアルで会ってもいいと言ってもらえたばかりだし、断られることもないだろうと、ちょっと自信を持って聞いてみたのだけれど、コロから返ってきたのは意外にも沈黙。そして「いや……」という、にごすような回答だった。 「やめとく。フレ登録なんかしなくても、どうせまたどこかでバッタリ会えるだろ」 「えっ?」  まさか断られるとは思わなかったので、僕は変な声を上げてしまった。何か気に障ることをしただろうかと考えたけど、心当たりがなさすぎる。  ひょっとしたら、メイくんみたいなタイプかもしれない。すぐにやめることが前提だから、ゲームの中で親しい人をつくらない。ちょっとさみしいけど、プレイスタイルは人それぞれだから、仕方ないとも思う。 「……そっか、わかった。ホントに、また会える?」  フレンド登録はできないまでも、せめて口約束だけはしておきたい。確認する僕に「さあな」と笑いながら答えて、コロはヒノモトからログアウトした。
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