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「なら、新しいゲームに誘うのはやめとくか」 「前に言ってたやつ?」 「そう。近々オープンするらしいから、夏樹もどうかと思ったけど」  いつもだったら「仕方ないなあ」と言いながら、メイくんの提案に乗っていた。けれど、今回は即答できない。頭に浮かんだのはコロのこと、猫又のこと、大正時代の街並みのこと。 「……ちょっと考えてもいい?」 「うん、もちろん」  僕の歯切れの悪い返事を聞いても嫌な顔ひとつせず、メイくんはうなずく。眼鏡の奥からの青みがかった視線をスマートフォンに向けて、ヒノモトではない別のゲームの情報を集めながら。 「でも、珍しいね。ホントに」  あまり相手の感情などを気にしないメイくんにしては、それこそ珍しい呟きがぽつりとこぼれる。「ヒノモト、そんなに気に入った?」 「え?」と、僕は思わず聞き返してしまう。  最初は、すぐにでもやめたかったはずだ。自分のアバターが女の子だということが理解できなくて。理解したくなくて。でも、今は少し違う。  大正時代の風景はとてもキレイだし、巫女の役割もちゃんとわかればおもしろい。何よりコロと遊ぶのは楽しかった。猫又だって、とってもかわいい。もう少しあそこにいたいと思う理由が、今ならこんなにたくさんある。  できればメイくんとも、もっと遊んでみたかったけど。そんな恨み言を、慌てて頭から追い払う。完全に冷めてしまったものを、再び温めるのは難しい。周りがいくら息を吹きかけたところで、肝心の火種がなければキャンプファイヤーなんてできっこない。  だからただ「そうかも」と、小さくうなずいた。
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