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「……具合、ずっと悪いの?」 「うん」  我ながら踏み込みすぎた質問だと思う。普通はあまり人に訊かれたくないことだし、知られたくないことのはずだ。それでも、コロは逃げずに答えてくれる。 「よくわかんねぇけど、生まれたときからこんなカンジ。医者には、大人になったら元気になる、って言われてる。しんどいのは子どものうちだけだって」 「そっか……」  絶対に治らない病気ではないと聞いて、少しだけほっとした。そんな僕とは対称的に「でもさ」と続けるコロの声は低く沈んでいる。 「俺は、いま走りたい。大きくなったらとかじゃなくて、いま。思いっきり走ったり、飛んだり、戦ったりしたい」  小学生の男の子なら、休み時間に当たり前のようにやっていることだ。友達同士で遊べる範囲の、とんでもなくささやかな望みだ。それが、コロには許されない。 「いまだけだから我慢しろって、なんなんだよ。そんなの自分が元気だから言えるんじゃん。発作中に、このまま死んだらどうしよう、って……そんなふうに思ったことがないから言えるんだ」  ぐっ、と。首の後ろが重くなる。コロの額の熱が、じわりと広がっていく。 「……なにもできないのは、いやだ」  くぐもった声の振動が、そのまま僕の心臓を強く揺さぶった。  ああ、そうか。だからコロは、ヒノモトをはじめたんだ。だからコロは、ずっと鬼面を外さないんだ。だからコロは、あんなに楽しそうに動くんだ。  全部の根っこにあった、たったひとつの答え。それを語るコロの声が、あまりにも小さくて、細すぎて。だから思わず「できなくないよ」と、強い否定を返してしまった。  そうだよ、なにもできなくなんかない。だって、だって。 「――友達が、できたじゃないか」  コロに友達だと言ってもらえて、うれしかった。  新しい友達ができて、僕は本当にうれしかった。  そんなふうに思えるほどのドキドキやワクワクをくれたのは誰でもない、ヒノモトのコロだ。現実世界にいる――いまは僕の背中にいる、この小学生の男の子だ。  僕の肩をつかむ小さな手に、ほんの少しだけ力が込められる。しばらくして、首の辺りから熱が離れた。コロが頭を上げたのだろうと思った、その瞬間。 「……ばーか」 「いたっ!」  後頭部に、鈍い衝撃。え、頭突き! ひょっとして頭突きされた!?  手がふさがってしまっているから、じんじんと痛みを訴えてくる部分をさすることもできない。うっすら涙目になりながら「ひどいよ、コロ」と情けない声を上げる。  顔が見えないので、コロが今どんな表情をしているかはわからない。でも、まるでヒノモトにいるときのように楽しそうな声で笑ってくれたから、僕もつられて笑ってしまった。
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