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 火車の女性のような猫のような顔の中心で、血走った目がカッと見開かれた。同時にコロが地面を蹴る――速い!  右に左にと動きながら火車に迫るコロの背中が、あっという間に小さくなる。そのバフ盛り盛りの想定外のスピードに、覚醒したばかりの火車も追いつけていないようだ。大きく振り下ろした腕は、コロの残像さえ捉えることができず、むなしく地面に突き刺さる。 「いける……!」  火車の第二形態は第一形態よりも体が圧倒的に大きいぶん、動きは鈍い。さっきのように、宙に飛び上がったコロを追って自分も飛んでいくような真似はできない。  いうなれば、地面に縫い止められたままの巨大なサンドバックだ。アクションも単調だから、コロなら簡単に回避できるだろう。ただとんでもなく体力が高い。削りきるのに相当な時間がかかる。  そうなると不安なのは、小太郎くんの体調だ。大きな負荷をかけ続ければ、いつ発作が起きてもおかしくはない。  当の本人であるコロは、もちろん自分のタイムリミットを理解しているだろう。攻撃が通りやすそうな腕の関節や付け根、首筋や額などをねらって、猛烈な速さで術技を仕掛けていく。  コロをサポートするため、僕も必死に回復の術技を唱え続けた。メロンカッパンとは違って、火車は少し離れた僕のことも攻撃対象にする。ときどき思い出したように髪の毛の先の車輪から炎の矢が飛んでくるけど、そのたびにコロが戻ってきて助けてくれた。 「ありがとう! でも僕のことは放っておいてくれていいよ。が、頑張って避けるし!」 「信用できねー。ハルキが落ちたら、その時点で終わりだからな。おい猫又、ちゃんと守っとけ」 「にゃあん」  というようなことをくり返しながら、火車との戦闘は続く。だんだん慣れてきたと思ったころ、火車の動きが大きく変化した。ボスは体力が減ってくると、攻撃パターンを変えてくる。より激しい方向に。 「うお!」 「わ!」 「にゃ!」
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