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「お、来た来た。やっぱいいじゃん、その千早。いかにも巫女ってカンジ。な、サクラ?」
「みゃあん!」
「あはは。ありがとう」」
一足早くメロンカッパンたちと戯れていたコロが、戦闘を中断して駆け寄ってくる。サクラと呼ばれた猫又が、僕の肩で同意の声を上げた。僕が「猫又に名前をつけたい」と言い出したときはコロも驚いていたはずだけど、もうすっかり定着している。
火車からドロップした《桜花の千早》は、レアアイテムというだけあって、あまりにも繊細で上品につくられていた。中身が女の子じゃない僕が装備することに、ちょっとした後ろめたさのようなものを感じていたけど、コロとサクラが喜んでくれるなら、着てよかったと思う。
「そうだ。しばらくヒノモトを離れて別のゲームをしていた友達が復帰するんだ。今度、三人で一緒に遊ぼうよ」
「へえ。そいつ、うまい?」
「強い?」ではなく「うまい?」と聞くところがコロらしい。ヒノモトは単純にレベルが高いから強いというゲームじゃない。術技を使うタイミングなど、プレイヤースキルが試される場面が非常に多いのだ。
その点で言えば、間違いなくメイくんはコロに負けないくらい上手だと思うので、僕は「うまいよ」と答えておく。
「だから、いい加減フレンド登録しようよ。そっちのほうがパーティ組みやすいの、コロも知ってるでしょ?」
「あー、フレンド登録すると……ほら、バレるだろ。バイタルアラームが出てること」
やっぱりそれが理由だったのか。バイタルアラームが出ていることは、本人や、その周りにいる人が音によって感知することができる。でもフレンドリストを見れば、バイタルアラームが出ていることがはっきりとアイコンで表示されるのだ。「友達が危ない状態だから助けてあげて!」と教えてもらえる、とてもありがたい機能だと思う。
「心配をかけたくないっていうのはわかるよ。でも僕は、友達が苦しんでいることに気づけないほうがずっとずっと嫌だ」
「う……」
《フレンド》ではなく《友達》という言葉を出されると、コロは弱い。しばらく迷ったあとで、おとなしく僕の登録申請を受けてくれた。
ようやくフレンドリストにコロの名前がのる。たった二人だけの、僕の大事な友達。もうひとりの異国風の名前の友達がオンライン状態になる日も、きっともうすぐだ。
「よっし、行くか討伐」
「えー。お祭りも終わっちゃったし、平常モードでまったりしようよ。僕、曇天堂の新作スイーツ食べに行きたい」
「みゃおん」
「ほら、サクラもスイーツがいいって」
「あ、ずるっ! そいつの意見もカウントしたら二対一で全部ハルキが勝つじゃん!」
ギャンギャンわめくコロの腕を引っぱって、有無を言わさず火ノ都へ連行する。
こういう強引なとこ、ちょっと春花に似てきたかも。そんなふうに思えることがうれしくてうれしくて、僕は大きな声で笑ってしまった。
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