プロローグ

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プロローグ

 巨大なコンニャクの妖怪が、太くて長い腕を野球のバットのように大きくスイングさせる。刀を振りかざして飛びかかってきた(さむらい)の胴を横からなぎ払うと、そのまま野球のボールみたいに吹き飛ばしてしまった。 「メイくん!」  思わず現実世界でのニックネームをさけびながら後を追った僕の目の前で、侍がべしゃりと音を立てながら落下する。普通なら大事故だし、大けがをしているところだ。けれど、地面に仰向けに転がった侍は空を見上げたまま、自分がホームランになったことなど忘れたかのように淡々と口を開いた。 「こらこら。オンラインで軽々しく個人情報を口に出すなって、先生にも言われたでしょ。オレのことは、ちゃんとシュレットガルドさんと呼んでくださいよ」 「長いんだってば。前も聞いたと思うけど、もう一回だけ聞いてもいい? このゲームは和風の世界観なのに、どうしてメイくんのアバターは名前も見た目も外国人風なの?」 「オレも何度も答えたと思うけど、もう一回だけ答えとくよ。金髪で青い目のサムライが、今のオレのマイブームなんだって。だいたい、そっちこそどうなの」  それを言われてしまうと、僕はのどを空気の固まりでふさがれたかのように言葉が出なくなってしまう。  だって知らなかったんだ。このゲームのアバターが、自分が心の底から望んでいる姿を投影して自動的に作られてしまうなんて。それを知っていたら――いや、それでこの姿になることを事前に知っていたら、僕はこのゲームを絶対にやらなかったのに。
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