『恩返し』の相手、タクムくん

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 タクムくんに初めて会ったのは、あたしが小学一年生の時。  妖力のある子どもが通う小学校に入学してすぐのころだった。  あたしは妖力をうまく使えなくて、『ダメギツネ』と呼ばれていた。  帰り道、とぼとぼと帰っていると、他の子どもたちが追い抜きざまに言う。 『お前、ほんとに先祖返りかよ』 『全然、妖力使えねぇよな』 『ダメギツネ、転校しろよ』 『すぐにしっぽやら、耳やら出るし。才能ねぇよ』  言葉のとげが、あたしに突きささる。でも、あたしは言い返せない。  だって、みんなの言ってることは、本当だから。  何かあるとすぐに、キツネ耳やキツネのしっぽを出しちゃう。  それに周りのみんなみたいに、うまく妖力を使えない。  みんなの言う通り、才能がないとは思う。  だまって、うつむいていると遠くの方から声がした。 『男子が何人も寄ってたかって……そんなにその子が好きなのかよ?』  あたしの帰り道の逆方向から走ってきた男の子。それがタクムくんだった。  タクムくんがその時浮かべていた表情は、ぞくっとなるような怖い顔で。  周りの男の子たちも、思わず後ずさりながら叫んだ。 『うわっ、ただの人間だ。近づいたら、妖力を取られるぞ!』 『妖力が使えないダメキツネみたいになるのはごめんだぜっ』 『ご先祖様が、泣いてるぞっ』  そう言い残して彼らは走り去って行った。残されたのはあたしと、タクムくんだけ。 「そんなこと、あたしが一番分かってるよ……」  あたしのひとり言は、誰にも聞こえていない……はずだった。
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