3人が本棚に入れています
本棚に追加
タクムくんに初めて会ったのは、あたしが小学一年生の時。
妖力のある子どもが通う小学校に入学してすぐのころだった。
あたしは妖力をうまく使えなくて、『ダメギツネ』と呼ばれていた。
帰り道、とぼとぼと帰っていると、他の子どもたちが追い抜きざまに言う。
『お前、ほんとに先祖返りかよ』
『全然、妖力使えねぇよな』
『ダメギツネ、転校しろよ』
『すぐにしっぽやら、耳やら出るし。才能ねぇよ』
言葉のとげが、あたしに突きささる。でも、あたしは言い返せない。
だって、みんなの言ってることは、本当だから。
何かあるとすぐに、キツネ耳やキツネのしっぽを出しちゃう。
それに周りのみんなみたいに、うまく妖力を使えない。
みんなの言う通り、才能がないとは思う。
だまって、うつむいていると遠くの方から声がした。
『男子が何人も寄ってたかって……そんなにその子が好きなのかよ?』
あたしの帰り道の逆方向から走ってきた男の子。それがタクムくんだった。
タクムくんがその時浮かべていた表情は、ぞくっとなるような怖い顔で。
周りの男の子たちも、思わず後ずさりながら叫んだ。
『うわっ、ただの人間だ。近づいたら、妖力を取られるぞ!』
『妖力が使えないダメキツネみたいになるのはごめんだぜっ』
『ご先祖様が、泣いてるぞっ』
そう言い残して彼らは走り去って行った。残されたのはあたしと、タクムくんだけ。
「そんなこと、あたしが一番分かってるよ……」
あたしのひとり言は、誰にも聞こえていない……はずだった。
最初のコメントを投稿しよう!