『恩返し』の相手、タクムくん

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 先祖返りが通う小学校を卒業したことで、あたしはおじいちゃんの家に居候させてもらうことになった。  タクムくんがこの辺りに住んでるってことが分かったから、あたしだけお引越し。 「やっと……、やっと……、タクムくんに会える!」  タクムくん、どんな男の子に成長したんだろう。やっぱりイケメンだろうなぁ。  優しくてかっこよかったらきっと、モテモテだろうな。  だとすると、取り巻きの女子たちとバトルが始まったりするんだろうか。  そんなことを考えながら走って、校門に到着。  だけど、門は閉まっている。 「遅刻した人は、今日は授業を受けられないってことかなぁ……」  腕時計を見ると、確かに今は八時四十分。遅刻だ。 「おやぁ? 初日から遅刻とは、なかなかやるねぇ」  ぞくっと背筋が凍る感じがした。この感触、もしかして……。  声のした方を見ると、そこには細い目をした男の人が立っていた。 「おや君は……。僕と同族みたいだ。じゃ、今日はオマケしてあげよう」  意地悪く微笑んで、男の人が門を開けてくれる。 「あ、ありがとうございます。えっと……、あなたは」  あたしが問いかけると、男の人は口の端を吊り上げる。 「僕? 僕は一年三組担任の、狸山だよ。タヌキの先祖返り。どうぞよろしく」  タヌキの先祖返り! まさか普通の中学校で、先祖返りの人に会えるなんて! 「初めまして、狐塚小春です。キツネの先祖返りです」 「ああ、キミが狐塚さんかぁ。それじゃ、キミは僕のクラスの生徒だねぇ」 「担任の先生ですか。これからよろしくお願いします」 「よろしくねぇ。ということは、先祖返りの生徒を二人も見なきゃいけないのかぁ」  狸山先生が、小さくため息をつく。  え、あたし以外にも、先祖返りがいるってこと!? びっくり。 「あたし以外の先祖返りって、一体誰なんですか」  あたしの問いかけに、狸山先生が笑う。 「名前を言っても分からないと思うけどぉ。……阿川拓夢って言うんだ」  タクムくん!? え!? 彼も、先祖返りだったの!!?
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