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「それじゃ、説明するね。僕と、少年オオカミは、ここで部活動をしている」
「その、少年オオカミって呼び方やめろ」
タクムくんが嫌そうに顔をしかめる。
「あのぅ、なんで、タクムくんを少年オオカミって呼ぶんですか?」
「ああ、それはねぇ、彼がオオカミの先祖返りだからだよぉ」
オオカミ! 先祖返りの学校で、オオカミは、他の先祖返りとは違った『能力』を持っているって聞いたことがある。
「とは言っても彼は、その辺の人間とそう変わらないんだよねぇ。だから、小ギツネちゃんと『恩返し』の契約ができた」
「先祖返りの学校にも入学できなかったし、今も普通の中学生だしな」
むすっと、タクムくんが答える。
「少年オオカミは、マヤカシを浄化する力を持ってるんだよぉ」
「マヤカシを、浄化できる……」
『マヤカシ』は、元々はアヤカシなんだけど、人間やアヤカシに害を与えようとするものたちのことなんだ。
あたしたち先祖返りやアヤカシたちは、マヤカシを見つけることはできる。だけど、元のアヤカシに戻す力は持ってない。
「だけどねぇ彼、マヤカシの姿が見えないんだ」
「それは……」
「役立たずだろ」
タクムくんが、笑う。でも目は全然笑ってない。
「あたしも、見えません……」
実はあたし、アヤカシも、マヤカシも見えないんだ。先祖返りの人たちは、人間でもあるから、見えるんだけどね。
だから、あたしは『ダメギツネ』って呼ばれてたんだ。
「見えなくても大丈夫だよぉ。僕が、見えるからぁ」
先生がそう言ってから、真顔になる。
「でも問題が一つあってぇ。……マヤカシの声が聞こえないんだよねぇ」
「声」
「そっ。声が聞こえないと、マヤカシが何を望んでるか分からないじゃない? そうなると、浄化のしようがないんだよねぇ」
腰に手をあてて、大きなため息をつく先生。
「……あの」
「んー?」
「……あたし、聞こえます。マヤカシの声」
「へ?」
「はぁ!?」
あたしの言葉に、タクムくんと先生が同時にあたしを見る。
「姿は見えないけど、声だけは聞こえるんです。多分、マヤカシの声だと思ます、確証はありませんが」
だって、見えてないからね。
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