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コーヒー
「上がってけよ…コーヒーぐらい淹れてやる」
『…じゃあ、一杯だけ』
エントランスを抜け、エレベーターに一緒に乗る。
バーのカウンターより近い距離。
スーツの袖同士が触れ合う。
カチャリ…
「適当に座って、ジャケットよこせ」
『ああ…ありがとう』
冬夜はとりあえず、ダイニングテーブルの椅子に腰掛ける。
『この部屋…禁煙?』
「ああ…吸うならベランダで」
『了解』
「ここで飲むか?」
『ああ…そうする…広いベランダだな。テーブルに椅子まである』
「俺もここでよく過ごすんだ」
ふたりで椅子に座り、タバコを吸う。
『なぁ春夜…お前が諦められないのって…』
春夜は深く息を吐き出す。
「…俺だけを愛してくれる…冬夜…お前は?手に入らないってモノって?」
『俺を愛してくれる…春夜…』
どちらからともなく、唇が重なる。
でも、一瞬だけ…一瞬で離れた。
冬夜は、春夜に触れた唇から身体が震えてくのを感じた。春夜も何かを感じたらしく、手で口を覆う。
『なんだこれっ…これが…春夜の言ってた運命なのか?』
「…っつ…」
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