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プロローグ「絶対絶命」
ハァーっと息を吐き出せば白が舞い上がるような。とある冬の、昼休み。
俺は、この学園で最も美しいと言われている少女を屋上に呼び出していた。
「ねえ南条、いきなり屋上に呼び出すなんて一体何の用?」
現在、眼前におわします彼女の名は、片桐 茜。学園屈指の美貌を誇る、俺の幼馴染である。大きな二重の目に、程よく膨らんだ胸。そして茶髪のショートカットがよく似合う、文句なしの美少女だ。
「単刀直入に言おう。今日、お前には伝えたいことがあるんだ」
「え!? へ、へぇー、そうなんだ……」
そう。俺は今日、彼女に秘めた想いを伝えるべく、ここまで呼び出したのだ。
「そ、それで? 私に伝えたいことって何なのよ?」
「まあ、待て。そう急かすな、片桐。俺は……俺は、今からお前に、大事なことを伝えようとしているんだ。お前の返答次第で俺の人生は大きく左右されることになる。だから、あまり急かさず、焦らさず。今から俺が言うことをよーく聞いていてほしい」
「へ!? そ、そうなんだ……アンタのこれからの人生に関わること、ね……」
真っ赤に頬を染めて、目を丸める彼女。あまりに愛おしくて、ほとばしる衝動を止めらない。言いたい。早く伝えなきゃ。この想いを、一秒でも早く。
「よし。じゃあ、言うぞ」
「あ、ちょ、ちょっと待って! 私、まだ心の準備が──」
よし! これから俺の人生で一番大切なことを伝えるぞ!!
さっきから胸の鼓動がうるさくてしょうがないけど、勇気を振り絞って伝えるんだ!
──さあ! 俺の想いよ届け!!
「片桐 茜。明日から卒業するまでの間、毎日お前のパンツを見せてくれないか?」
「……」
流れる沈黙。全てを吐き出せてスッキリな俺。そして、呆然と立ち尽くす片桐。
……むむ、おかしいな。彼女の応答が無い。まるでしかばねのようだ。
「なあ片桐、返事を聞かせてくれないか?」
だが、案ずることは無い。どうせ片桐は、昔から俺にゾッコンなのだ。返答はYESに決まっている。
「返事なんて、そんなの……1つに決まってるじゃない……」
うむ、やはりYESか。そりゃあ俺のことが好きなら、NOとは言えまいて。
「ほんっと……アンタったら、中学の時からずっと……!」
ん? ちょい待て。なぜだ。片桐がプックリと頬を膨らませて、プルプルと震えている。オマケに硬そうな握り拳まで作っているじゃないか。
おい、待てお前。なぜにその拳を振り上げる? そりゃあまるで今から俺を殴るような──
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