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人面疽を皮膚科で看て貰う
「人面疽は、皮膚病? なんですかねえ。こんな症例、今まで診たことがないんですが」
皮膚科の医師は、ぼくの膝に出来た人面疽を見て首を傾げた。
「先生、俺を病気扱いしないでくれよ」
しかも、凄く喋るし、人間の臼歯や犬歯もあり喉仏もちゃんとある。
「人面疽にかかって、痛みや痒みはありますか?」
「特にないです、うざいくらいですかね」
「他に、体調が悪くなったりしたことはありますか?」
「特には。うざい以外の変化はないです」
「そうですか、コレ、膝にできやすいのかなあ。一回、レントゲンとMRIをとってみましょう」
ぼくは先生の指示でレントゲン室に向かい、人面疽の精密検査を受けることにした。検査機の中でも人面疽は語りかけてうざいが、終わるまでずっと待つことにした。
「ここ、大腿骨の下の方なんですけど、頭蓋骨が見えます。脳があり、脊髄があなたの神経近くまで伸びています。これは悪化する前に切ったほうがよさそうですね」
「ゲッ!斬るのか?斬るのだけは勘弁してくれ」
「それかドライアイスで乾燥させて、殺菌したほうがいいかも」
「それ、拷問じゃん! やめてくれよ!」
「そもそも、何が原因で人面疽になるのかわからないんだよなあ」
「ネットニュースでは人面犬や人面魚を飼う人が増えたと聞いています、恐らくそうした生き物から病原体が感染したんじゃないかと思いますが」
「どうですかねえ、暫く様子を見ておく必要はありそうですし、お薬出しておきます」
先生はそういって看護士を呼んだが「しかし参ったな、どんな薬がきくんだ」とボソッと呟いた。
了
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