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人面犬を飼ってみた
「コイツ、何を食うんだ?」
というのか、実在したんだ。哺乳類だよな。おっさんの顔してるけど、オスなのか? メスなのか、わからない。人面犬を保護して最初に思ったことはそれだ。
「おい兄ちゃん、餌くれよ」
おっさん並に口悪いだろう。取り敢えず動物愛護センターか、保護犬か、保護ネコの預かり施設に預けたほうがいいんだろうし、里親を探した方が一番だろうが、絶望的だろうなあ。
「餌だよ、餌。ビールとジャッキーカルパスだ」
「餌の好みが中年かよっ!」
「ホップじゃだめだ、ノルアルだったら噛み殺すからな。ジャッキーカルパスは少し辛い奴を頼む!」
「しかもめっちゃ拘ってる」
「早くしろ、腹が減って気がたってんだ!」
俺は人面犬の言う通り、コンビニでビールとジャッキーカルパスを買い、与えてやった。
「名前、決めなきゃな、ポチ?」
「却下!」
「タロウ」
「論外!」
「ブサオ」
「ネーミングセンス皆無かよ!」
「じゃあ何がいいんだ?」
「ケルベロスと呼んでくれっ!」
「へっぴり腰ふり太郎?」
「やっぱり殺すっ!」
「冗談だよ、兎に角ケルベロス、元気になったら里親探さないとな......」
「俺にはやりたいことがある」
何やらふいに語り出したので、聞いてやることにした。
「何をしたいんだ?」
「救助犬になりたい」
人の命を救う救助犬か、それには嗅覚が優れていないといけないが、人面犬の嗅覚ってどうなってるんだろう。
「嗅覚に自信あるか」
「パンティの臭いならかぎ分けられる自信はあるっ!」
誰のパンティか嗅覚で識別出来るという訳か変態じゃないかそれ。
「絶望的だ、他は?」
「介助犬だ、ベランダに干されたパンティをとってくることは朝飯前だ」
「お前の嗅覚はパンティ以外に使い道ないのかよ!」
「盲導犬はどうだ、俺が飼い主の目となり耳となりパンティへと導く」
「お前の趣味だろ! パンティは禁止だ、じゃあ警察犬や軍用犬はどうだ?」
ケルベロスに犯罪者を追跡する能力があるかんからないが、提案してみた。
「それいいな、俺と相棒が下着ドロを追いかけて下着を取り返すんだ、そして嗅ぐっ!」
「駄目だ、もう少し現実的なものにするか、そうだ。アニマルセラピーやアニマルヨガなんて流行ってるけど、それにしてみないか」
「俺の好みじゃない!」
困ったな、ならここは、Twitterに写真を載せて拡散させれば、プロモート出来るかもしれないが、フォロワーから作り物だとかCGだとかいわれ、アンチが出てきても考えものだが、なにをやってもアンチは出るものだ。
「Twitterにお前の写真を載せるぞ」
カメラを構えるが、どうにも鼻から伸びている鼻毛が気になる、人面犬のオスは自分の身だしなみに興味がないのか。俺は人面犬の鼻毛を抜いて整容してやった。
一週間のスパンで「保護人面犬奮闘記」をTwitterに載せる。人面犬が珍しいのかフォロワーもたくさん増えた。
それから一年後。
「ケルベロス、お前もすっかりパパになったなあ、よく頑張ったよ」
ケルベロスはメスと結婚し、子供を授かった。
了
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