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「なんだかんだで、けっこう消費出来るものねぇ。」
多いと思った"朝食"がほとんど無くなっているのを見て、村崎は感心している。
「でしょー!」
東條は満足気だ。
お蔵の二人がまた芝居を始める。
「それはランスロット。我々が増えたからに違いない。」
「余りものは俺に任せろ。思い切り食い散らかせ円卓の騎士たちよ!」
「ありがとうランスロット!」
「我が王の未来のために!」
「あははは。」
笑ったのは、さっきの茶番劇を見逃した武藤綾だけだった。
「はいはい。すべりかけた空気を、沙耶香のお母様に救われて、良ぉございましたわね。」
と、東條由樹がからかう。
「で、あんたたち騎士は、この一宿一飯の恩義に、どう応えるつもりなのよ。」
力田と大西は顔を見合わせて、口角を上げる。
「一宿一飯ではないけどな。一飯ね。ただの一飯。」
「ちょっとした結界を張りに来たのですよ。」
力田正明が含みを持たせる。
「結界?」
東條の問いかけに応えるように、大西良治は鞄の中から、除菌シートやら、コロコロや雑巾などの清掃用具を取り出す。おもむろに窓を全開にして、暖かな陽射しとまだ肌寒い外の空気を室内に取り込む。皆が食べ終えたごみを集めて、廊下のゴミ箱に投げ入れて、病室の隅々まで掃除して廻る。窓ガラス、窓の桟、患者用の水屋の引き出しの一つ一つを開けて、隅々まできちんと拭き取り、さらには乾拭きの雑巾もかける。備え付けのライトまで2人は丁寧に埃を拭き取る。カーテンや枕カバーやシーツなどには、アルコール除菌スプレーを吹きかける。一通り掃除を終えると、
「掃除をきちんとすると言うのは、一種の魔除けにもなります。結界を張る一つの手順です。」
そう言って、大西良治は鞄のさらに奥から数枚の紙の護符を取り出す。
すると豪慶が口を開く
「おう。これはこれは…」
「そうです。日本最強とも言われる比叡山横河の角大師の御札です。」
すると…あら不思議。
「う、ううん。」
武藤沙耶香が目を開ける。
長い眠りからようやく目覚めた。
「はい。おはようさん。」
武藤綾が娘に、いつもと同じ、朝の声をかける。
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