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(もしかして…)
グゥー…
空腹を感じる…
「サーヤ大丈夫よ。」
(ふみ姉の声だ。)
「サーヤねぇ、がんばれー!」
「サーヤねぇ、大好きー!」
(さつきぃ。やよいぃ。助けてあげられなくてごめんね。)
「大丈夫だよー。サーヤねぇー。」
「だよー!」
「母親ってすごいね。わかるんだ。」
(力田さん。そうなの?)
いつのまにか、異臭は消えて、いい香りがして来た。爽やかな空気が伝わってくる。
(もしかして…)
「じゃあ、さしずめ二人は、沙耶香ちゃんの騎士だね。」
(また東條の声だ。)
「円卓の騎士たちよ!背中は俺が守ろう。思い切り戦って来い!」
「ありがとうランスロット!」
「我が王の未来のために!」
(ふふ。何してるの?あれ?もしかして…私はもう起きてる?幾何学模様は瞑ったままの瞼の中の景色?だから、私の瞼が陽の光を浴びて、皮膚のオレンジ色なんだ。私、起きてる。なのに金縛りにかかったままだ。)
沙耶香は目を開けるよう、声をあげるよう、努力をするが、なかなか上手くいかない。
「それはランスロット。我々が増えたからに違いない。」
「余りものは俺に任せろ。思い切り食い散らかせ円卓の騎士たちよ!」
「ありがとうランスロット!」
「我が王の未来のために!」
「あははは。」
(母さん!)
「大丈夫よ。沙耶香大丈夫だから。」
(母さんの声?)
「はいはい。すべりかけた空気を、沙耶香のお母様に救われて、良ぉございましたわね。」
(由樹ちゃん!私、もう起きてるんだよ。)
自分の周りの状況が理解できるようになるほど、自分だけ金縛りにあっているのが怖くて怖くて仕方がない。
(私、ずっと、このままなの?)
「結界?」
徐々に身体が温かくなっていく。
沙耶香は諦めない。
なんとか声だけでも出してみる。
「う、ううん。」
ようやく声を絞り出した。
武藤沙耶香が目を開ける。
声の解放と共に身体も軽くなった。
(やったぁ。金縛りが解けた)
母親は沙耶香の顔をまじまじ見つめて
「はい。おはようさん。」
いつもと同じ、目覚めのあいさつをしてくれた。
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