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第一章 翔之介・IN・ハワイ
1・ユキと翔之介の♥チョッと大人なラブソング!
オアフ島の別荘に来て、三週間が過ぎる。
翔之介と過ごす新婚の一か月を、出逢ってから最初のひと夏を過ごした想い出深いこの別荘で迎えたいと、切に望んだのはユキだ。
ドン・フィエコ家の別荘は、それこそ世界中にあるが。「どうしてもオアフ島で過ごしたい」と、翔之介の両親に懇願したのだ。
翔之介を産んだ後で、女の子を流産したことがある翔之介の母は、ユキを死んだ娘の生まれ変わりだと信じている節がある。
ユキの想いを誰よりも理解してくれたカノジョは、当たり前のようにオアフ島の別荘を用意をしてくれた。
そんなユキと翔之介の結婚式は、四月十日のユキの十八歳の誕生日に。花々が咲き乱れる庭園の真ん中に急きょ建てましたガラスの離宮で、厳かに執り行われた。
ユキのウエディングドレス姿を、翔之介は一生忘れないだろう。
華麗なレースが美しいそのドレスは、モナコのグレース王妃のウエディングドレスをイメージしたもので。翔之介の母がユキのために、スペインで人気のウエディンブランドに特注したウェディングドレスだ。
宝塚歌劇団のトップスターのようなユキによく似合って、言いようもなく気品あふれる姿だったと思う。
ユキの名前を縫い取った蜘蛛の糸のようにしなやかなベルギー製のレースを頭からかぶり、その下にはダイアモンドが煌めくティアラをつけていた。
手に真っ白なバラの花束を持ち、花びらを撒くフラワーガールに先導されたユキが、祭壇の前で待つ翔之介のもとへと毛氈を敷いたバージンロードの上を進んでくる。
そっと差し出す翔之介の手に、嬉しそうに手を乗せたユキの姿が心に深く焼き付いた。それから二人はマリア像の前にひざまずき、永遠の愛を誓ったのだ。
翔之介の両親と、ドン・フィエコ家の親戚一同。ユキの親代わりの周防弁護士、そして美術部の仲間たちが見守る前で。
富める時も貧しい時も、健やかなる時も病める時も、ユキは翔之介を支えて愛し抜くと誓った。
また翔之介も、ユキを裏切らず、永遠にユキだけを愛し抜くと誓った。その言葉こそが、ユキが欲しかったすべて。指輪を互いの指に滑らせた後で、嬉しそうに微笑むユキを、翔之介が愛おしそうに見つめる。
「これでユキは、僕だけのユキだ」、翔之介の独占欲が熱く疼く。こんな気持ちを持つ日が来るとは、想像もして居なかった。
ユキと出逢うまでの翔之介は、女は取り換えの効く、仕事に疲れた時の気晴らしに使う便利な道具だと思っていた。
大富豪の家に生まれた翔之介には、少年の頃から言い寄る女は引きも切らず。探さなくても向こうから接近してくるから、その中からその時の気分に合わせて相手を選べば良かった。
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