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「翔之介さんはユキに出逢うまで、そうとう遊んでたらしいからさぁ」、そんなオンナは掃いて捨てるほどいるはずだと、言い切ったのだ。
ユキが目の淵を赤くしているところを見ると、図星らしい。
「そんなオンナが接近してきたらさぁ、ユキが嫉妬を見せたって普通だと思わないかッ」、かなり力が入った解説だ。
ソコからが、危ないお耽美小説で人気の朱雀夏彦の真骨頂。ミツコが書いた筋書きでは。
たぶんだが、別荘の外に食事にでも出掛けた時に、そのオンナと出逢う可能性が高いだろうと推測。
「勿論、ユキはそのオンナを一撃でやっつけるよね」、大きく頷くユキ。
その後こそが、嫉妬を見せつけるまでの大事な序奏だ。
「哀し気な顔でさぁ、涙の一粒も流して見せなよ」と助言。
慌てた翔之介は、ユキを急いでレストランから連れ出して別荘に向かうだろうが。その帰りの車の中が正念場だと説明した。
嫉妬に燃える言葉をぶつけた後で、ユキが翔之介さんをどんなに愛しているか、切々とうったえるのだ。
「胸に縋り付いてさぁ、大泣きしてもいいよ」、ミツコが楽しそうに企みを水増し。
「オンナがユキの知ってる奴なら、ソコも利用する」、つまり相手を名指しで、嫉妬に燃えて見せるという訳だ。悪どい戦略を立てると、「出来るよね」と念を押した。
「次のステップはね、別荘に帰り着くまでに翔之介さんを欲望でパンパンにすることだよ」、まだ翔之介と関係を持ったことのないあの時のユキには、えらく無謀な話に聞こえたモノだ。
出来るだろうかと、顔が蒼ざめる。
「ココがね、これから話す策謀の大事な出発点になるんだからさぁ」
指を一本立てると、重要性を強調した。
あ時のミツコの言葉を一生懸命に思い出しながら、車の中でも頑張ったし、ベッドに翔之介を誘い込みもした。
手を引いて愛を強請るユキに、翔之介が嬉しそうな顔で誘われるままに付いてくると、ユキを優しくベッドに押し倒したのだ。
そのまま熱い愛の世界に突入。
激しく燃えた後の微睡みも、絶対に手を抜くなとミツコが言うから、そっと翔之介の腕の中に身を置いて、胸に甘えてひと眠りの態勢を取った。
【眠り姫の誘惑】だ。
腕の中でスヤスヤと聞こえるユキの寝息が眠りを誘い、やがて翔之介も微睡む。でも熟睡させちゃ駄目だと、ミツコが注意したのも忘れちゃいない。(ここで熟睡されては、作戦が台無しだ)
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