3人が本棚に入れています
本棚に追加
/5ページ
ヨー公子は案内の者に従って、城というにはいくらか小さい建物を進んだ。
この城を訪れるのは2回目だ。前に来た時、城の周りには薄紫色のライラックの花が咲き誇っていて、ヨー公子とその一家は城の主から歓迎の挨拶を受けたのだった。
今日は家族は来ていない。
「客人をお連れしました」
あるドアの前で案内の者が呼びかけると、「お通ししろ」と、思っていたのとは違う声がした。中にいたのは姫ではなく、その弟の王子だった。
光沢のあるイスに腰かけていた王子が、立ち上がってこちらを振り返る。銀髪のカツラが白い肌に似合っていた。青い目は丸く、口は紅をつけたように色づいていた。
公子は歩み寄って年下の王子にお辞儀をしようとした――が、直前でギョッとした。王子の後ろ側にあるベッドに眠っている女性がいたのだ。
「ああ、気になさらないで。姫はこの通り眠っております」
もちろん気にする。人形のように安らかな寝姿にドキドキしつつ、公子は言った。
「狩りで近くに来たついでにと思ったのですが、タイミングが悪かったようですね。また日を改めます」
「確かに理想的なタイミングではありませんが、歓迎しますよ、公子。姫の代わりに私とお茶でもいかがですか?」
最初のコメントを投稿しよう!