3人が本棚に入れています
本棚に追加
/5ページ
「では、1つだけ聞いても? 姫は贈り物だったらどんなものを好まれますか?」
「公子からでしたら何でも喜びますよ。あえて言うなら……花は珍しいものが好きですね。単純な感性です」
「世の中には、単純な方がいいこともあります」
1対1で話をするのは初めてだが、公子は王子のことが苦手になりつつあった。王子は表情をうかがうように、青い大きな目をスッと細めた。
「公子。ご兄弟を疎ましく思ったことはありませんか?」
頼もしい兄や器用な弟のことが頭に浮かんだが、悪いことを考える前に急いで打ち消す。
「たまにケンカをすることはありますが、疎ましいなんて一度も。兄弟には恵まれたと思っています」
「そうですか。私はあります」
王子は席を立ち、姫のいるベッドにゆっくり数歩近づいた。
「この美しい顔。愛されるために生まれてきたようなものです。何の努力もいらないんだ」
「王子、姉上が……姫が起きてしまいます」
「大丈夫。姉は深く眠っていますから」
確かに、姫は先ほどからピクリとも動かない。肩までブランケットに覆われて、目と口をしっかり閉ざした可憐な顔は真上を向いている。公子の胸に違和感が芽生えた。
眠っている。
深く眠っている。
姫が絶対に目を覚まさないことを、王子は確信している――。
最初のコメントを投稿しよう!