公子と王子と眠る姫

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「では、1つだけ聞いても? 姫は贈り物だったらどんなものを好まれますか?」 「公子からでしたら何でも喜びますよ。あえて言うなら……花は珍しいものが好きですね。単純な感性です」 「世の中には、単純な方がいいこともあります」  1対1で話をするのは初めてだが、公子は王子のことが苦手になりつつあった。王子は表情をうかがうように、青い大きな目をスッと細めた。 「公子。ご兄弟を疎ましく思ったことはありませんか?」  頼もしい兄や器用な弟のことが頭に浮かんだが、悪いことを考える前に急いで打ち消す。 「たまにケンカをすることはありますが、疎ましいなんて一度も。兄弟には恵まれたと思っています」 「そうですか。私はあります」  王子は席を立ち、姫のいるベッドにゆっくり数歩近づいた。 「この美しい顔。愛されるために生まれてきたようなものです。何の努力もいらないんだ」 「王子、姉上が……姫が起きてしまいます」 「大丈夫。姉は深く眠っていますから」  確かに、姫は先ほどからピクリとも動かない。肩までブランケットに覆われて、目と口をしっかり閉ざした可憐な顔は真上を向いている。公子の胸に違和感が芽生えた。  眠っている。  深く眠っている。  姫がことを、王子は確信している――。  
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