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「今、何を考えました?」
いつの間にか、王子の視線はこちらに戻っていた。
「そんな怖い顔をしないでください。まるで毒蛇でも見たみたいだ」
ヨー公子は答えなかった。王子は赤い唇の両端を上げた。
「そうだ。公子、姫にキスをしてみてはいかがですか?」
「なっ……」
「昔から、姫を起こすのは素敵な男性のキスと決まっています。もしかしたら目を覚ますかも知れません」
動かない公子に、王子は小首を傾げた。
「公子の想像が私の想像した通りなら、ご自分の目で確かめては?」
色々な意味でこの上なく無礼なのは承知していた。しかし、姫がただ眠っているのか何か恐ろしいことがあったのかは、実際、近くで確認しないと分からない。
公子がベッドに近寄ると、王子はそこから離れ反対側に体を向けた。
「私はこちらを見ていますので」
顔をしかめてから、ベッドの上の姫を眺めた。思わず触れたくなるような愛らしい寝顔。ところが、それを見ることができたのはごく短い間だけだった。
姫が目を開けた。
驚いた公子が何か言う前に、彼女が静かに起き上がった。その目に剣呑な光が宿る。
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