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再び顔を上げた際、鮮やかな青いギンガムチェックの何かが私の目の前を右から左に横切った。
(ごめんなさい)
そう言おうと思ったが、咄嗟に声が出ない。
その青いギンガムチェックは、よく見ると、私より少し若い女の子が後ろ髪を纏めるためにつけた大ぶりのシュシュだった。
そして、一瞬だけ見えたその子の横顔の左の目元。
少し大きな泣きボクロが。
青いギンガムチェックと泣きボクロに、その当時を思い出させるような暑い日差しが、私の中に何年も眠っていたある記憶を呼び起こさせた。
「瑞希ちゃん…?」
確信は持てないが、私が子供の頃、毎年夏休みを一緒に過ごした、母の実家の近所の女の子、瑞希ちゃんだと、直感した。
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「瑞希ちゃん、あーそーぼー」
「あ、彩奈姉ちゃん?
ちょっと待ってー。
“夏休みの友”、今日の分がまだ終わってないから」
その当時、私は12歳の小学校六年生。瑞希ちゃんは二つ下の四年生。
毎年夏休みは、海水浴場近くで母の実家がやっている海の家の手伝いのため、母の実家に母と私の二人が、八月の頭から月末までの約一か月ほど帰省していた。
といっても、手伝っていたのは母だけで、私はただ遊んでただけなのだが。
母の実家にいる従兄は既に高校生で、少し歳が離れていた。
必然的に私の遊び相手にはならず、一人っ子の私はいつも一人で遊ぶことになる。
そんな夏を送っていた私が小学四年生の時、瑞希ちゃんに出会った。
目がクリクリっとした、泣きボクロが印象的な女の子。
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