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そして、二人で留守番していた時のこと。
お婆ちゃんと瑞希ちゃんに見せるために着ていた中学校の制服から私服に着替えていると、閉めたはずの部屋の襖が、いつの間にか指一本分開いているのに気がついた。
そして、それに気づいた私がその襖を閉めようと、そちらに歩みを進めた瞬間。
微かな足音が遠ざかっていくような、そんな気配がした。
(気のせいかな…?)
そう思った。
いや、この後お祝いをしてくれるお婆ちゃんや叔父さん夫婦のためにも、そう思い込もうとしたというのが正解かもしれない。
でも、結果的にそのお祝いの日以降、お婆ちゃんの葬式の日まで、私がお婆ちゃんの家に行くことはなかった。
それから。
その年以降、夏休みに来なくなった私を心配して、お婆ちゃんの家経由で何度か瑞希ちゃんから手紙を貰ったけど、行かない理由を中学生の私はどうしても書けなくて、一度も返事を出すことはなかった。
そして、瑞希ちゃんも中学生になった頃。
その手紙も来なくなった。
(瑞希ちゃん、怒ってるだろうな)
そう思って罪悪感に苛まれていた思春期の私も、いつしかそれも忘れて、瑞希ちゃんのことを思い出すことも無くなってしまっていた。
そして十数年ぶりの今日。
唐突にそれを思い出した。
私は、その青いギンガムチェックのシュシュをつけ、左目の下に泣きボクロのある女の子を、自然と追いかけていた。
目の前を歩く女の子…といっても、彼女が瑞希ちゃんならもう25歳になっているはずなので、年相応に綺麗になっている。
もちろん、背丈も体格も大きくなり、あの頃の面影もない。
青いギンガムチェックのグッズと泣きボクロ以外に確証は無い。
グッズがリボンから年相応にシュシュに変わっているけど、ライトブルーのギンガムチェックの色使いはあの日のままだ。
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