農家の悩み

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 その日彼は江戸の町に大根などを持って出かけていた。彼はご機嫌だった。  もうすぐ町の長屋に着くと野菜と長屋の便所の糞などを交換して帰るのだった。長屋に着いた。 「こんにちは」 「よく来た」 「これですが」と彼は大根を見せた。 「これはいいものだ、遠慮なく便所から糞を見って行ってください」 「ありがとうございます」と彼は肥柄杓で長屋の便所から排泄物を置けに入れた。 「これで帰ります」 「用心して帰ってな」 「はい」と彼は江戸の町の道を肥をかついで歩いた。 「臭い」と露骨に嫌な顔をする娘宗はいた。 「何やってるんだか町の女か農家の女の方がいいな」と彼は言って平気で歩いた。 「臭いんだよ」と絡まれてよほど肥をかけてやろうとしたが大事な財産なのでやめた。  彼は帰宅して肥を畑にまいた。 「何か言われなかった?」 「何も」と彼はすましていた。 「珍しいね」 「当たりまえよ」と彼は笑った。  これでまたいい作物ができるのだと彼は機嫌よくなった。 「農家のほうが商人より地位は上なんだぜ」と彼は妻に言うと妻は笑った。 「兄貴ありがとう」 「これもかみさんや弟という家族がいるから頑張れるのだよ」と彼は言って家族で笑い合った。 「兄弟っていいな」と彼は言った。 「私も忘れちゃいやよ」と妻は笑った。                               (了)
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