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私は手にマグを持ち、すっかり冷えたコーヒーを涸れた喉に流し込んだ。そろそろ仕事に戻る時間だ。私は机に置いたままのスマートフォンに向かって、問いかけた。
「SIG、『きょうだい』って、何?」
画面が瞬いて、電子音声が響いた。
「スミマセン、ワタシ ニハ ワカリマセン。デスガ……」
しばらく間を空けて、SIGは答えた。
「ユウカ サン ハ ゴゾンジ デショウ?」
「私にも、よく分からないの」
すぐ答えられる人なんて、この世にいるだろうか。
「ソウデスカ、ソレ ハ コマリマシタ ネ」
「べつに困らないんじゃないかな」
何だか分からないけれど、それでもなんとかやっていけるのが兄弟姉妹というものかも知れない。
「スミマセン。ヨク ワカリマセン」
「私も」
それでもいつかSIGに、「きょうだい」とは何か、ちゃんと教えてあげられる日がくるといいなと思った。もしかすると、AIたちの学習進化の方が早くて、私の方が教えられてしまうかも知れないけれど。
しばらく考え事をしているうちに、省電力機能が働いて画面が消えた。もしかするとSIGは、画面が消えている間も「きょうだい」について考えているのかも知れない。そう考えるとなんだか、おかしみが湧いてきた。
私はコーヒーのおかわりを淹れるため、席を立った。
(了)
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