少女の告白

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 瑞実の言葉に、ため息のような声を返した菜子はだるそうにしながらも立ち上がろうとする。五十嵐が手を貸して菜子が立つと、自分の腕を杖代わりにさせて菜子を瑞実からかばうように立つ。 「瑞実ちゃん、なんか勘違いしてるよね」  瑞実が怪訝な顔をすると、菜子は不愉快そうに顔をしかめる。 「私、麻木くんとは何もないから。今も過去も、今後も!」  ここまで否定されると、叔母の立場としては微妙だ。そこまで非のある男だっただろうか。頭の回転が良すぎて嫌。それなら翔子もわかる。 「私の知る限り、麻木くんは瑞実ちゃんしか見てなかったよ」  菜子の言葉に瑞実が口を半開きにして固まる。 「麻木くんにフラれたって話、よく聞こえてきたよ。諦めきれない女子に、私が何度トイレで囲まれたか」  菜子が遠い目をするも、司の意外なモテっぷりに翔子も口を開けて聞き入ってしまう。翔子が見ている限り、そんなにモテるような気配はない。司が翔子に対して口を開けば嫌味しか言わないからかもしれないが。 「本当は付き合ってるんでしょって。違うって言っても、本当のこと言ってって。仮にそうだって言ったら、無事に解放してくれるわけもないのにね」 「……でも、そうなんでしょ」 「違う。麻木くんは誰が好きなのって追求しに来た女の子に匂わせるんだよね、私を。それを聞いたんでしょ?」  菜子の勢いに飲まれ、瑞実が頷く。 「麻木くんは瑞実ちゃんを巻き込みたくない。だから周りが信じそうな私を挙げたんだよ。万が一、何かあっても何とかできそうとかなんとかって。私はいい迷惑だったけどね」 「……嘘」 「嘘じゃない。本人に聞く?」
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