少女の告白

71/75
41人が本棚に入れています
本棚に追加
/192ページ
『麻木司様  ご無沙汰しております。お元気でしょうか。  東京でスマホ越しに話して以来ですね。  あなたが叔母さんと同じ警察官になったと弁護士さんから伺いました。そんなあなたの何か役に立てればと思い、手紙を書くことにしました。  あなたが指摘したように、私の家の中には問題があったと思います。父は外では穏やかな社長さん、母は祖父の介護を嫌な顔せずに行う優しいお母さん。でも家族しかいなければ父は怒鳴るだけ、祖父の介護と父に怒鳴られる母のストレスは私に向かいました。身体的な暴力を振るわれたり、ご飯を出されなかったりするわけではありません。自分が父にされるように声を荒げるとか、暴言を吐かれたり人格を否定する発言をされるくらいでした。  そういうのは言葉の暴力というそうですね。弁護士さんから教えてもらって、初めて知りました。  母からデブと言われてもブスと言われても、あんたの子じゃんと聞き流していたので暴力を受けているという認識はありませんでした。離婚したいと言うので、すればと言ったら「あんたのために我慢している。なんでそんなこともわからないんだ」と言われたこともあります。何を言われても、私に当たることしかできない母親に同情する気持ちもありました。  けど、どうしても許せなかったのはあの子のことです。  祖母同士が友人だったこともあって、あの子の家庭の事情は筒抜けでした。高山さんから話を聞いた祖母は嬉々として母に話し、祖母亡き後は母が私に話しました。嬉々として、時には優越そうに「父親が誰かわからないなんて」と。
/192ページ

最初のコメントを投稿しよう!