少女の告白

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 そう言っていたのに、いざあの子を前にしたら母の態度が変わりました。見下していたにもかかわらず、「あんたみたいな暗い子じゃなくて、ああいうかわいい子がよかった」と。  その一言で、私の中の何かが切れました。母だけが我慢しているような言い方でしたが、私だって何を言われても我慢していました。我慢の限界でした。だからといって、あの子にきつい態度を取れば「転校してきたばかりなのに」と私が母に怒られるのはわかっていました。  それは恋夏も同じでした。  恋夏のお母さんは恋夏をモデルにしようと一生懸命でした。一生懸命といえば聞こえはいいかもしれませんが、妄執と言ったほうが正しいかもしれません。そんなお母さんに愛想を尽かしたお父さんとお兄ちゃんが恋夏を見捨てて家を出て、恋夏はたった一人でお母さんの妄執に耐えてきました。  そこに現れたのがあの子です。東京にいたからか、彼女は恋夏より垢ぬけていた。恋夏が肥料や栄養剤を与えて温度管理をして人の手を加えて出荷される綺麗な花だとしたら、あの子は雨風に打たれて太陽の光を浴びて田んぼのあぜ道で凛と自生している小さな花でした。たくさんの人の目につくわけではない。けれど気づく人はその自然の美しさに気づく。
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