姿を消した少女

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 私は本を読んでいると真面目とからかわれるのが嫌で、学校では本を借りるだけで校内では本を読まないようにしていました。あんなにたくさん本があるのに読めないのは拷問のようでした。拷問は言い過ぎかな。言い換えるなら、願掛けのようでした。好きなことを我慢すれば願いが叶う、とかね。残念ながら、あの頃の私には願いらしい願いはありませんでしたが。  あの日は、彼女に付き合ってと言われたから残りました。両親が離婚危機で、両家の親族を交えての話し合いが終わるまでは帰りたくない、一緒にいて、と。  クラスで一番力のあるキラキラ女子グループの頂点に立つ彼女が、地味グループの私に頼むなんて夢にも思いませんでした。だから嬉しくて、二つ返事でオッケーしました。それとは別に、離婚危機にある両親を持った彼女に対して優越感を抱いていました。こんなにかわいい娘がいても、両親が離婚危機に陥るんだって。特にかわいいわけでもない私を娘に持つ両親は平々凡々、離婚なんて関係ない家庭でしたから。  司書の真紀先生が「模造紙取りに行ってくるね」と、図書室を出て行った時です。  彼女は何をしているのだろうと本から顔をあげれば、彼女は本を読むでもなく、絵を描くでもなく、買ってもらったばかりだというウサギのもこもこしたペンケースをなでていました。
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