姿を消した少女

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 今年届いた年賀状の差出人住所を見ながら、封筒に宛先を書く。  東京都渋谷区、渋谷といったらハチ公とマルキューがあるのは、田舎に住む私だって知っている。ブレザーとチェックのスカートというかわいい制服にメイクをして歩く女子高生、学校指定のジャージで歩いている人はいない。そんな街で、あの子は女子高生をやっているのか。  封筒に住所を書いて、息を吐く。手紙の文字よりも、人目につく封筒に字を書くのは緊張する。世の女の子のようにかわいくもなく、整ってもいない字。習字でも習っておけばよかったかと思うけれど、習ったから字がうまく書けるとは限らない。住所よりやや大きめの字で、あの子の名前を書く。  もともと東京にいて、おばあちゃんの介護のため東京から転校してきた子だ。地元の子の多くと同じように、冬は制服のスカートの下に学校指定の紺色のジャージをはいて登下校していた子が、短いスカートで生足をさらす渋谷の女子高生になっているのかと思うと遠くに行ってしまったんだなと寂しさを感じる。
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