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でも、渋谷の女子高生の姿があの子にとっての普通だったのかもしれない。郷に入っては郷に従えと、こっちにいる間は田舎者の私たちに合わせてくれていたのだとしたら。浮かないように、いじめられないように。馬鹿な子じゃなかった。賢くて、成績だって上位クラスにいたはずだ。女子を敵に回さないように、うまく立ち回っていた。そんなことができない私を、うまく守ってくれていた。
友達という名前の近所のよしみで中学の三年間、東京に引っ越してからも年賀状のやり取りを続ける関係を続けてくれたあの子は優しい。優しいあの子に、彼が好意を抱いているのに私は気付いている。彼もまた優しい。優しいから、あの二人を傷つけたくない。だから私は、あの子にあてて手紙を書いた。
ごめんね、と。一つはいなくなることに対して、一つは優しいあなたたちを利用することに対して。
あとは明朝、学校近くのコンビニから手紙を投函するだけ。
私の両親は娘が帰ってこなければ、学校や警察に連絡するはずです。母は彼のお母さんに相談し、母から話を聞いた彼はあの子に連絡するでしょう。彼があの子と連絡を取っていなくても公開捜査になれば、あの子の目にだって触れるはずです。優しいあの子は親や彼に相談し、この手紙が警察の目にとまることに出るでしょう。そうすれば私は彼女のために何らかの事件に巻き込まれ、姿を消したと思われる。初恋の人のために、すべてをささげた優しい子。
あなたたちと同じ、優しい子になりたかった。
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