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一見すると小説かと思うような文章。けどそれは、ルーズリーフにつづられた手紙。昔、携帯電話が中学生の大多数にまで普及していなかった頃、授業中に手紙を回したなと懐かしい記憶が呼び起こされる。今から十五年前、拝島翔子が中学生だったころの話だ。今、目の前に座っている大学生たちはメッセージアプリ世代か。
「消印は三年前、今になって手紙が出てきた理由は?」
証拠として押収した封筒を入れたビニール袋を、翔子は顔の横で振る。
気の強そうな目にシャープなフェイスライン、一文字に結んだ薄い唇。百七十二センチの身長にショートカット。細身の男性と見えなくもない翔子は北宮城警察署生活安全課の刑事だ。御年三十歳、独身。若い女の子に対する態度が少し厳しくなってきたと、署内で噂されていることを苦々しく思っている。
そのせいか、斜め前に座る女子大生に対しての口調がきつくなる。
「以前住んでいた家の方に届いていたので」
翔子の斜め前に座っている神原菜子が申し訳なさそうに答える。薄いブルーのシャツワンピースの上にカーディガンを羽織る彼女は、手紙の受取人だ。
差出人の山内瑞実は三年前、高校三年生のクリスマスイブに突然姿を消した。遺書もなく公開捜査に踏み切ったものの何の情報もなく、今も行方不明のままだ。
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