姿を消した少女

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姿を消した少女

『神原菜子様  ウサギは寂しいと死んじゃうんだよ。 あれは私が小学校六年生、図書委員会の会議を終えた雨の日でした。朝からしとしとやむことなく振り続ける冷たい雨に、いつも図書室でおしゃべりをしている六年生も足早に帰宅して、図書館に残ったのは彼女と私だけでした。  人がいなくなった図書室からは人の熱気が消え、ストーブの上に置かれたたらいから、ぐっぐっと水が熱湯に変わる音がかすかにするだけでした。その音をBGMに私はハリー・ポッターと賢者の石をわくわくした気持ちで読んでいました。  図書委員といえども、本が好きな人たちばかりではありません。貸し出しの当番は他の委員に押し付けられる、司書の真紀先生が優しいから。そんな理由で図書委委員に立候補する人は多かったのです。  だから本当に本が好きで図書委員になれない人もいました。けれど、そういう人はたいていクラスでも目立たない私のような人間です。だから第一志望の図書委員なれて嬉しかった。家に帰ってお母さんに「図書委員になった!」とランドセルを置く前に報告するくらい、嬉しかったんです。  彼女は私とは正反対でした。委員の仕事をサボってもいい、真紀先生が優しい。そういう理由で図書委員になった子です。
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