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「ねぇ、それで、どうだった!?」
「うるさい……! 来栖くんに聞こえちゃうから、お願いだからもう少しボリュームを抑えて……」
放課後、ホームルームが終わるとすぐに結が私の席に飛んできて、今は色々と聞かれている。
流石に来栖くんに聞こえたらマズいから、という言葉を付け足して結を落ち着かせる。
結は不満そうに眉を下げて、口を尖らせた。
ちらっと、来栖くんのいる方に目を向ける。
来栖くんは友達とわいわいと喋りながらゆっくりと帰りの支度をしていた。
大丈夫、聞かれてないみたい。
ほっと息をつくと、声のボリュームを下げて話し始めた。
「やっぱり、ダメだった。来栖くんは小学校の頃の同級生と一緒に行くって」
「そっかぁ〜、残念だったね。でも、小学校の同級生なら誰と行くかは想像つくかな」
「来栖くんは小学校の頃もあんな感じだったの?」
ふと、気になって質問してみた。
今まで、来栖くんの過去については結に聞いてこなかった。
私は来栖くんや結とは違う学校だったから。
幼馴染の結なら来栖くんのこと、かなり知ってると思うし。
「うーん……、今の颯太は勉強も運動もできるっていう感じだけど、小学生の頃の颯太はスポーツをすごくやってたかな。ほら、昼休みに校庭でサッカーするタイプ」
あっー、納得がいった。
昼休みになった瞬間に教室のボールを奪って、校庭で毎日のようにサッカーをする人、私のクラスにも居たな。
その頃はよく飽きないなぁとか、疲れないのかなとか思ったな。
その子は本当に好きだから毎日のようにやってるのに。
「ふーん。それで、勉強の方は?」
「勉強は……小学校のテストが簡単だっていうのもあると思うけど、結構、点数は良かったんじゃないかな? でも、それで目立つこともなかったよ。あたしのクラスに毎回のように100点を取る子が居たからさ。あんなに頭が良くなったのは中学からだよ。もともと、地頭はいいけどね」
「やっぱり、勉強も得意だったんだね」
まぁ、小学校で成績が悪かった人が急に成績が良くなることはあまりないし。
地頭がいいんだ……確かに、来栖くんと話してると会話が弾む。
それにクラスの中心にいるから色んな人に信頼されているだろう。
「あっ、でも慣用句はダメでねぇ。その時のテストが65点で後日、親に慣用句の猛勉強をさせられたって」
結は思い出したかのように話す。
へぇ、慣用句が苦手なのか……。
でも、来栖くんが猛勉強っていうのは想像できないな。
あの時、猛勉強したから今の来栖くんがあるんだろうな。
「何、考え込んじゃってるの?」
急に結が私の顔を覗き込む。
「な、何でも無い。帰るときにでも夏祭りの話、しようよ」
私ははっと我に帰ると、ごまかすために少し早口で言った。
「うん、勿論! それじゃあ、帰ろうか」
そう言って、結は先に教室を出る。
私も早く教室を出たほうが良いよね。
結を待たせるわけにも行かないし。
私も教室を出る。
最後に教室のドアを閉めようとすると、来栖くんと目があった。
すると、来栖くんは私に向かって軽く手を振ってくれる。
それを見て、私も来栖くんに向けて手を振り返した。
「なーんだ。ラブラブじゃん」
結がからかうために話しかける。
「あのねー……来栖くんは多分、私のこと好きじゃないと思うよ?」
「どういう思考からそうなるんだか……」
結が珍しく小さな声でボソボソと喋る。
何を言ってるのか聞こえない……。
「何か言った?」
「いや、別に何も言ってないよ」
うーん、何か言った気がするけどな。
……気にしてもしょうがないか。
「あっ!」
結が突然、大声を上げる。
「どうかしたの?」
「ちょっと、机の上に忘れ物したのを思い出して……。ちょっと、待っててくれる?」
「うん、わかった」
そう言うと、結は早歩きで教室へと入っていった。
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