私は生きる

3/10
前へ
/10ページ
次へ
美穂は、先天性ミオパチーという病気だった。 筋力低下により、心臓や呼吸にも症状を患う病気で、治療法は未だに見つかっていないという難病だ。 1歳や2歳の段階で亡くなるケースも多い病気とのことで、両親は美穂が死んでしまう前にと、細心の注意をはらいながら美穂を可愛がった。 おもちゃから何から沢山の物を買い与え、免疫力も弱いためか、病気にならないようにと、食事や環境にもお金を費やした。 そう考えたのは両親だけではなかった。 祖父母や叔父叔母ですら、世界は美穂を中心に回っていた。 美穂 美穂 美ホ みほ み … … … いつしか、家族との時間は美穂との時間になった。 私は、美穂に近づくことも出来なかった。 怪我をさせたらどうするの。 外で変な菌を拾ってきたりしてない? 具合悪いならあっちいってて。 何かあってからじゃ遅いんだから。 私は我慢した。 私の書いた絵も、私が欲しいぬいぐるみも、私の誕生日だって。 私は私に言い聞かせた。 これは仕方のないことなのだと。 あと1年待てば… あと半年待てば… あともう少し待てば… 美穂は… そしたら 私が…
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加